関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 237
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知的障害者入所更生施設への関わりを通して理学療法士に求められるものは何か
小貫 睦巳
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抄録

【目的】
身体障害者施設に勤務する理学療法士(以下、PT)はその必置条件がないことから常勤として採用されにくく、知的障害者施設(以下、知障施設)においても同様に非常勤としての関わりとなる事が多い。しかし近年少子化にも関わらず障害児の数は減少しておらず、成人を迎え施設に入所する知的障害者に運動障害を伴うものが少なからずおり運動療法の提供の必要性は高い。更に非常勤としての関わりの中で、職員への運動や医学的知識の啓発の必要性が増してきているように思われる。本研究の目的は、PTが関わる知障施設において、職員の特性やどのような関わりが必要とされるのか、講義とアンケートによりその手がかりを得ることである。
【対象・方法】
都内の知障施設(入所定員40名)の職員向け研修講義を行った。内容は、1.脳性麻痺の神経学的問題と筋骨格系問題、2.加齢による生理学的変化、3.廃用症候群とその症状、について啓発を促す内容とした。その上で無記名のアンケート調査を行い職員の特性やPTが必要とされる関わりについて明らかにした。アンケートの項目は、a.入所者の運動不足について、b.加齢による身体の変化、c.脳性麻痺の神経学的問題と筋骨格系問題について、d.廃用症候群について、の認識を3段階の順序尺度で問う形式とした。また講義終了後に感想を提出してもらい内容を概括した。本研究は倫理的な配慮としてアンケートへの回答は無記名であり、協力は自由であることを事前に十分説明し協力を求め了解を得て行った。
【結果】
参加者の内訳は、保育士11名、社会福祉士3名、介護福祉士2名、看護師2名、事務職1名、の計19名 (全職員の76%)であった。アンケート結果は、aが「強く問題を認識」が18、「何となく気づいていた」が1、「何も感じない」が0であった。b、c、dは、「知っていた」「聞いたことがある」「全く知らなかった」のうち、bが10:8:1、cが3:5:11、dが6:6:7だった。感想は、入所者の運動不足について廃用症候群を学んで腑に落ちた、また加齢の医学的知識や脳性麻痺などの運動について理解が深まり支援の現場で活かせそうとの声が大多数であった。
【考察】
自立支援法は障害者総合福祉法として2013年の施行を目指しているが、その内容についてはまだ具体的に明らかになっておらず、介護予防に該当するサービスの提供や入所者の高齢化に伴う諸問題について意識を高める事は重要である。施設職員は、運動不足や加齢の問題等の一定の知識はあるが、医学に立脚した具体的な知識に乏しいことが明らかとなった。PTは関わりの中で、このような情報を提供し、一緒に生活を見て共に考え、個々の対象者にあったアドバイスを求められていると言える。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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