関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 240
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バズ・セッションを用いた症例検討の有効性
芳野 純松野 隆史
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抄録

【目的】
症例検討は理学療法の教育において効果的な手法である。しかし一般的な発表による症例検討は、参加者の積極性に偏りが出ることや、深く議論することが少ないように感じる。今回、理学療法士の職員教育において、発表を行わない少人数でのディスカッションを中心にした、バズ・セッションによる症例検討を実施し、その効果を検証したため報告する。
【方法】
バズ・セッションとは、問題を少人数グループ内でディスカッションさせ、解決策を共に考える教育手法であり、参加者が主体的に参加できる利点があると言われる。本研究の対象はS県の診療所に所属する理学療法士12名(平均経験3.3年)。方法は、紙面上で作成した症例を用いた。紙面には検査結果・社会背景・他部門情報のみ記載した。症例はクモ膜下出血後10年経過した症例で、動作能力のみならず、医学的知識、社会背景等、広範囲な情報を考慮する必要がある症例である。進行は、まず20分間紙面を読み、個人で症例の問題点と目標を「評価メモ」に記載した。その後、症例に関して2人1組で20分間のディスカッションを行った。組み合わせは経験年数の長い者と短い者がペアになるようにした。ディスカッション実施中新たに気づいた事を「気づきメモ」に記載した。その後2つの組を合わせ4人1組でディスカッションを行い、同様に気づきメモに追加記載した。効果の検証として、評価メモと気づきメモを集め、記載内容を短文化してデータ抽出した。データは、評価メモと気づきメモ毎に、2名の解析者でICFに沿って、健康状態・心身機能身体構造・活動・参加・背景因子(環境・個人因子)の5つに分類した。解析は、5つの分類において評価メモと気付きメモ間で、記載されたデータ数の平均の差を、wilcoxon検定にて比較した。さらに経験年数の長短により2群に分け、5つの分類における、記載数の割合を単純比較した。倫理的配慮として、口頭にて本研究の趣旨およびデータを報告以外に使用しないことを説明し同意を得た。
【結果】
ディスカッションは全てのグループで積極的に行なわれていた。データ数は、評価メモ132、気づきメモ149であった。平均記載数の差は、活動が評価メモで有意に多く、背景因子が気づきメモで有意に多かった。経験年数の短い群は、評価メモで心身機能身体構造と活動の割合が高かった。
【考察】
症例検討をバズ・セッションにて行うことで、全ての参加者が積極的に関わることが可能であった。他者と議論を行うことにより、環境・家族等の背景因子に関しても気づくことが出来たと考える。
【まとめ】
バズ・セッションによる症例検討は、参加者の積極性を促し、気づきを促す効果があると思われる。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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