関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 252
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3軸加速度の信号解析による課題動作獲得進度の予測モデル生成のための予備的研究
山崎 光太木村 朗
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抄録
【目的】
運動学習分野において課題動作獲得の進度の予測について学習課題の取り組み始めにおける加速制御情報(初期情報)に基づく推定を行った報告は少ない.初期情報を基にした課題動作獲得の進度の予測が可能になればゴール設定等ハビリテーション期間の目安を推論する新たな技術的方法となる可能性がある.本研究は運動制御に関わる生体情報(3軸加速度)を調べることで課題動作の成否の判別性を検討することを目的とした予備的研究として運動時の3軸加速度の変化を検討した.
【方法】
対象は成人男性3名(平均年齢:34±13歳)を対象とした.対象選定基準として本研究で設定した運動課題経験がなく,研究内容を説明し同意を得られたものを対象とした.運動課題はフラフープを腰部で回すこととし,フラフープを40秒間回させ,その際の腹部(左右ASIA結んだ中間点上にMEMS SemiconductorによるAcceleration Sensorを実装した3軸加速度センサーDT178A,CEM社製,Trigger Range18g,精度±0.5g,誤差性能±1%)を貼付しサンプリング間隔50m秒で動作中の加速度を得た.40秒間フラフープを落とす失敗をしても40秒間内で何度も実施してよいとした.得られた3軸加速度は,角周波数ごとのヒストグラムおよび直接フーリエ変換(DFT)による周波数分析,自己共分散分析を行い,課題成功例と失敗例の特徴を検討した.
【結果】
初回の試行で課題動作が成功した者は1名であり,2名の者は失敗した.成功した者では最高1回転のみ可能であった.それぞれの動作中の三軸加速度は,成功者のX軸の平均は-0.001で,Y軸の0.888で,Z軸の-0.02であった.また,失敗者のX軸の平均は0.016で,Y軸の平均は0.309で,Z軸の平均は0.724であった.DFTは,成功者のX軸において0.1(radian/sec)を超える角周波数の振幅(amplitude)強度(g)が認められたが,失敗者ではいずれも0.1を超えるものはなかった.
【考察】
三軸加速度のX軸成分は,前額面上の加速制御を表している.フラフープの回転を成功させるためにはフラフープの回転を矢状面方向と前額面方向および抗重力方向に加速と減速をフィードフォワード制御的に交互に加え,同時に慣性力を制御し,フラプープが身体にもたらす加圧,減圧感覚情報に基づくフィードバック制御が機能しなければならない.動作獲得成功例では,角角速度0.1/秒周期を超える制御が可能であったことが,この動作を成立させたと考えられた.この周期の発生は,加速制御において100msecの繰り返しからなるため,フィードバック機構の発現ではなく,フィードフォワード機構の発現が示唆される.角加速度情報は運動学習の初期における課題動作獲得の進度の予測に有効かもしれない.更に例数を集め,検討する必要がある.
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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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