関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 284
会議情報

重症パーキンソン病患者のリハアプローチの症例検討
柿原 直哉安田 ひと美須崎 徹也前薗 昭浩田上 正茂荒木 俊彦浅井 亨
著者情報
キーワード: パーキンソン病, 感染症, ADL
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
パーキンソン病(以下PD)は,症状の進行に伴い活動性が低下すると廃用症候群を引き起こし,誤嚥性肺炎や感染症などを併発することが多い.今回,PDの進行とともに嚥下機能の低下や服薬管理困難から休薬となり,感染症によって入院した1症例を経験した.病態の把握に難渋し経過を各病期に分けて考察したので報告する.
【症例】
PD(Yahr分類Ⅲ)を基礎疾患とする74歳の男性.1週間程度の臥床期間を経て,尿路感染症の診断で入院となる.L-dopaは処方されていたが,嚥下機能の低下や服薬管理困難で休薬していた.1病日からL-dopaの投薬を開始し,2病日から理学療法を開始した.なお,発表にあたり口頭にて同意を得た.
【PT評価及び経過】
病期と症状により3期に分けた.1期(PD徴候改善)2~18病日:初期評価時は,Yahr分類Ⅴ,Barthel Index(以下BI):0点,1週間程度で振戦の消失,無動・姿勢反射などのPD徴候および,全身状態の改善を認め,理学療法では座位や立位など基本動作練習を実施した.PD徴候の改善に比べ,ADLの改善は乏しくYahr分類Ⅳ,BI:5点であった.この時期はPD徴候の増悪や入院前からの廃用症候群, 感染症による全身状態の悪化,またL-dopaの投薬の再開など病態を変化させる要因が混在しており,その把握に難渋した.2期(感染症の再燃)19~49病日:発熱が持続し,尿路感染再燃の診断となる.1期よりPD徴候に変化はないが,徐々に意欲低下を認めYahr分類Ⅳ,BI:0点となる.この時期の精神面の低下をPD症状の一つと考え,症例が受容する座位等の練習内容で廃用症候群の予防を図った.3期(感染症の改善)50~81病日:炎症所見の改善に伴い意欲低下の改善も認め,徐々に活動性が向上し平行棒内歩行が可能となる.最終評価ではYahr分類Ⅲ,BI:35点,起居動作は自立,独歩見守りとなる.
【考察】
1期は炎症所見とPD徴候の改善が認められた時期であるが,PD徴候とADLの改善の間にはTime lagがあった.PDは進行性疾患で,一度活動性が低下すると改善が困難となりやすい.本症例においてもPD徴候の改善後,ADLに反映されるのに時間がかかった.PTとしてはPD徴候などの身体症状に目を向けがちであるが,改めて全身状態の評価と知識が必要で,それが病態の把握に繋がると再確認した.2期は感染症が再燃し,それに伴い動作能力が低下した.介入時は精神面の低下をPD症状の一つであると考えていた.しかし,2期においてPD徴候には変化がなかった点と,3期において炎症所見と共に意欲にも改善が見られた点から,感染症の要因が大きく影響していたと考えた.3期では順調なADLの改善を認めた.その理由として,2期での感染症の再燃期も,精神状態に合わせた負荷量で廃用症候群の予防が行えた為であると考えた.

著者関連情報
© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top