関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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心臓血管外科手術後におけるVPEP療法の試み
原田 真二平安名 常宏大工廻 賢太朗岸本 敬史菊地 慶太倉田 篤
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抄録
【はじめに】
当院では、心臓血管外科手術後の呼吸管理の一環として振動・呼気陽圧療法(以下;VPEP療法)である呼吸器具、アカペラを使用している。VPEP療法に関する臨床研究は少なく、心臓血管外科手術後を対象としたものはない。そこで今回、心臓血管外科手術後にアカペラを使用し、その付加効果について検証したので報告する。
【方法】
1.研究デザインアカペラ導入前後に心臓血管外科手術を受けた患者を対象に、それぞれの群での「患者・手術因子」と「術後因子」をカルテにて後方視的に調査し比較した。「患者・手術因子」は1.年齢、2.性別、3.術前左室駆出率、4.麻酔時間、5.手術時間、6.体外循環時間、7.大動脈遮断時間、8.術後挿管時間、9.出血量と定めた。「術後因子」は1.術後肺炎発症の有無、2.リハビリ進行度(歩行開始日、100M歩行開始日、200M歩行あるいは階段昇降開始日、病棟歩行自立までに要した日数)、3.術後在院日数と定めた。統計学的処理は統計解析ソフトJSTATを使用しMann-WhitneyのU検定にて有意水準を5%未満とした。2.対象対象は当院に待機入院し、胸骨正中切開による心臓血管外科手術を受けた患者とした。対象の除外基準は、1.透析導入患者、2.術前の活動性が低い患者、3.術後24時間以内に人工呼吸器の離脱ができなかった患者、4.再開胸手術を行った患者、5.術後神経学的合併症が生じた患者、6.術後の精神異常が遷延した患者とした。本研究の対象はアカペラ導入前の平成22年12月から平成23年2月までの3ヶ月間に当院で心臓血管外科手術を受けた103例のうち本研究の適応基準を満たした50例(以下;A群)とアカペラ導入後の平成23年4月から6月までの同期間に当院で心臓血管外科手術を受けた115例のうち同基準を満たした68例(以下;B群)とした。
【説明と同意】
入院時に全患者に対し、医学データを学術的研究の目的にて使用する事を説明し同意を得た。
【結果】
患者・手術因子はA・B群間にて、麻酔時間(327.0±86.0vs363.8±97.7min)と体外循環時間(148.1±62.5vs176.3±58.3min)のみ有意差を認め、B群が有意に長かった。術後因子は全ての項目において有意差を認めなかった。
【考察】
術後因子において有意差を認めなかった為、今回の調査ではVPEP療法の付加効果を見出す事が出来なかった。しかし、麻酔時間と体外循環時間においてB群が有意に長かったにもかかわらず術後因子にて有意差を認めなかった事は、VPEP療法が早期離床の誘因となった可能性が示唆される。
【まとめ】
心臓血管外科手術後にVPEP療法を行い、その効果を検証した本邦初の臨床研究であった。今後も標本数を増やすかあるいは他の評価項目を追加するなどの工夫が必要である
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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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