関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 82
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関節可動域と褥創の関連について
木勢 千代子中村 睦美山形 沙穂森田 真純長谷川 恭一
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抄録
【目的】
褥創危険要因は、病的骨突出、関節拘縮、栄養状態低下、皮膚湿潤、浮腫が挙げられる。その中で関節拘縮の評価は有無の項目のみで、今まで具体的に関節可動域と褥創の関連を明らかにしたという報告はない。本研究では、関節可動域制限に着目し、褥創の有無で関節可動域に差があるかを明らかにする事を目的とした。
【方法】
対象者は、理学療法施行中の入院患者のうち日常生活自立度B・Cランクの者とし、仙骨、大転子部に褥創を有する者を褥創有り群(以下、有群)、無い者を褥創無し群(以下、無群)と2群に分けた。対象者の診療録から基本的情報(年齢、体重、身長)、褥創の有無、褥創がある場合は褥創の部位の情報を得た。また、下肢の股、膝、足関節の関節可動域を測定した。統計解析には対応のないT検定を使用し、有意水準は5%未満とした。対象者には研究説明を十分に行い、書面にて同意を得た。なお、本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
対象者48名中、無群は41名(男性14名、女性27名、平均年齢80.9±9.5歳、BMI20.1±4.1)、有群は7名(男性1名、女性6名、平均年齢77.6±8.3歳、BMI19.6±5.1であり、有群における褥創部位は仙骨5名、大転子部2名であった。2群に有意差が認められた項目は、右股関節伸展(無群2.9±7.6度、有群-1.4±4.8度)、左股関節伸展(無群1.5±7.9度、有群-2.1±3.9度)、左股関節内転(無群12.0±6.8度、有群6.4±6.9度)であった。
【考察】
有群は、有意に左右股関節伸展、左股関節内転に可動域制限が認められた。仙骨や大転子は骨盤と大腿骨から成る股関節の運動に大きな影響を受ける。本研究の対象者は日中ベッド上で過ごす事が多く、特に股関節の伸展制限があると、股・膝関節は屈曲位をとり易く、臥位では仙骨部に体圧がかかる。さらにギャッジアップは仙骨部にずれる力が働くため、褥創発生には環境因子も大きな影響を及ぼしていると思われる。褥創は圧力とずれ力が原因で、阻血性障害や再灌流障害となり、褥創発生に至る。今回は関節可動域制限と褥創のどちらが先に発生したか、原因追究は困難だが、両者の関連は改めて認められた。褥創発生には、個人因子や環境因子などの影響も大きく関与していると考えられる為これらの因子も考慮に入れ、今後は褥創部位と関節拘縮の部位の関連性があるか症例数を増やし検討したい。
【まとめ】
褥創の有無で左右股関節伸展と左側内転の関節可動域に差が見られ、両者に関連がある事が示唆された。
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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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