抄録
【目的】
これまでに車椅子駆動方法の特性が検証され,車椅子駆動
能力評価が運動介入効果の判定に用いられてきているが,車
椅子駆動能力評価の方法については十分に検討されていな
い.本研究では,10m直線駆動課題の所要時間を測定する車
椅子駆動能力評価(10m車椅子駆動)を複数の駆動条件にて
実施し,その信頼性および測定結果の差異について検討する
ことを目的とした.
【方法】
対象は健康な若年男性24人(平均年齢21歳)であり,研究
実施前にヘルシンキ宣言に基づいて本研究の目的と方法を説
明し同意を得た.10m車椅子駆動は,両上肢,両上下肢,一
側上下肢の3種類の駆動条件と,通常速度,最大速度の2つの
速度条件の計6条件にて,屋内平地の加速路3m,測定区間
10m,減速路3mの直線路を普通型車椅子にて直線駆動した
際の所要時間をストップウォッチで測定するとともに,最も
駆動しにくい(1),最も駆動しやすい(10)の10段階にて車
椅子駆動のしやすさ(主観的駆動難易度)を聴取し,各駆動
条件間で比較した.
【成績】
各駆動条件で測定した10m車椅子駆動は,級内相関係数
ICC(1,1)=0.78~0.93,ICC(2,1)=0.99の高い信頼性を示した.
一側上下肢駆動による10m車椅子駆動の測定値および主観的
駆動難易度の成績は,両上肢駆動または両上下肢駆動に比べ
て有意に低かった.
【結論】
10m車椅子駆動は高い信頼性にて測定可能であり,簡便に
実施できる評価であると考えられた.10m車椅子駆動の測定
値および主観的駆動難易度の成績は,一側上下肢駆動に比べ
て両上肢駆動,両上下肢駆動に比べて有意に低かったことか
ら,測定結果を吟味する際に駆動条件の特性を考慮する必要
があることが示唆された.とくに一側上下肢駆動では,直進
するために上肢の前内側分力と下肢の前外側分力を合わせな
がら推進方向を調整する必要があり,両上肢駆動および両上
下肢駆動に比べて前方への推進力を発揮する難易度が高まる
と推察された.