抄録
【はじめに】
脳卒中患者に対し早期からの起立動作練習はADL自立に
繋がるとの報告が多くある。今回、脳卒中患者に対し、起立
動作練習中心の治療を実施したが、ADL自立には至らなか
った。この症例について考察する。
【症例紹介】
本症例は既往歴にラクナ梗塞があり、今回、右被殻出血を
発症し左不全麻痺を呈した64歳男性である。尚、本症例には
発表の主旨を説明し同意を得た。
【初期評価】
JCS;1-3,運動麻痺BRS;上肢2,手指1,下肢2,表在感覚;
重度鈍麻,深部感覚;中等度鈍麻,基本動作;全介助,
ADL評価;Barthel Index(10点),FIM(39点)
【最終評価】
JCS;清明,運動麻痺BRS;上肢3,手指3,下肢3,表在
感覚;軽度鈍麻,深部感覚;軽度鈍麻,基本動作;寝返り-
近位監視,起き上がり-近位監視,移乗-近位監視,起立-近
位監視,歩行-軽介助,ADL評価;Barthel Index(55点),
FIM(78点)
【経過】
発症時、本症例は起居・移乗動作に全介助を要した。発症
から2週間後にベッド上動作が行えたことから、二木の予後
予測を踏まえ、起居・移乗動作自立を2ヶ月後の目標とした。
治療はADL自立度向上を目的とし、起立動作練習を中心に実
施した。しかし、発症から2ヶ月後の最終評価時に起居・移
乗動作自立には至らず、発症から3ヶ月後に起居・移乗動作
は自立した。
【考察】
吉田らは脳卒中発症早期からの起立動作によりADL自立
度が向上すると報告している。起立動作について、相場らは
下肢の支持性向上等に効果があると報告している。また今ら
は、CKC運動は起居・移動動作能力を向上し、ADL自立度向
上に繋がると報告している。しかし、本症例は発症から2ヶ
月で起居・移乗動作自立には至らなかった。この要因は、起
立動作は体幹回旋運動等の要素を含まず、起居・移乗動作に
必要な身体機能促通が不十分であったためである。よって、
各々の動作に必要な身体機能に対しても治療することが起
居・移乗動作自立に繋がると考えた。