抄録
【目的】
75歳未満の高齢者(以下 前期群)と75歳以上の高齢者(以
下 後期群)の人工膝関節全置換術(以下TKA)前後の関節
可動域(以下ROM)において,後期群の治療効果について
検証することを目的とする.
【方法】
平成22年11月から平成25年5月の期間にTKAを施行した症
例.調査項目はKellgren-Lawerence分類(以下K/L分類),
在院日数,リハ介入量,術前屈曲ROM,術後1週,3週,8週,
12週目の屈曲ROMと術前からの改善率とし,2群で比較し
た.
【倫理的配慮】
個人を特定する情報を提示しないよう配慮した.
【結果】
対象は前期群25例33膝(平均年齢68.6±4.8歳),後期群57
例85膝(平均年齢80.5±3.2歳)(以下前期/後期群順で記載)
分類は(II:2,III:10,IV:21)/(II:9,III:32,IV:43,V:
1)であった.在院日数(日)は21.8±4.8/21.5±5.2,PT介入
量(単位)は86.2±27.6/80.2±23.6でいずれも有意差を認め
なかった.屈曲ROMは,術前129.0±16.6/120.8±14.9,術後
1週目105.3±12.0/100.0±13.0,3週目122.7±11.5/115.4±
12.0,8週目124.1±10.3/117.4±10.7,12週目125.5±11.1/
117.7±11.5で各時期に有意差を認めた.改善率(%)は1週目
82.7/83.7,3週目96.2/96.3,8週目97.5/97.6,12週目98.2/
98.0でいずれも有意差を認めなかった.
【考察】
TKA後のROM改善経過を年齢間で比較した研究は少な
い.本研究より後期群ではどの時期でも前期群より可動域は
低いが,改善率では12週にわたり前期群と同等の改善を示し
た.TKA後の屈曲ROM改善経過は後期群でも前期群と同様
の治療効果が得られると考えられた.