主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
p. 103-
【目的】前十字靱帯(ACL)損傷後自然修復する例の報告において、自然修復の時期は明らかにされていない。ACL
自然修復の時期およびMRI における自然修復の形態、スポーツ復帰について検討した。
【方法】対象は2013 年5 月~2016 年4 月にACL 自然修復を確認した10 例であり、男性5 例、女性5 例、平均38
歳(15~67 歳)である。競技レベル2 例、レクリエーションレベル8 例だった。受傷後経過観察期間は平均22 ヵ月(5 ~47 ヵ月)。初診時KT-1000 manual max 患健差(KT-1000)4.0mm 以上でACL 機能不全を確認した例をA 群とした。自然修復を確認した時期、自然修復を確認した時点のMRI グレード、スポーツ復帰の有無、自然修復後の再断裂について検討した。ACL 形態回復のMRI グレード(I~IV)は井原の分類に準拠した(数字が小さいほど形態良好)。
自然修復の定義は、KT-1000 4.0mm 以上またはMRI で明らかに機能を失う損傷を確認後に、外固定や前方制動装具を用いないで治療後KT-1000 3.0mm 以内かつMRI でACL の連続性を認める状態に回復したものとした。本研究はヘルシンキ宣言に準じて倫理的配慮を行い患者の個人情報等の守秘義務に配慮して実施した。 【結果】A 群は7 例であり、KT-1000 平均7.4mm(5.0~10.0mm)だった。他の3 例は初診時自然修復していた。A 群の受傷後から自然修復確認までの期間は平均109 日(91~126 日)であり、自然修復確認時期のKT-1000 は平均0.5mm(-
1.0~0.5mm)だった。自然修復したMRI グレードは、I:5 例、II:4 例、III:1 例だった。A 群のうちスポーツ復帰した6 例中2 例が復帰直後に再断裂した。再断裂した2 例のMRI グレードはII、III だった。再断裂していない4 例のグレードはI:2 例、II:2 例だった。
【考察】本研究の結果から、自然修復は受傷後3~4 ヵ月の期間で生じることが示唆された。受傷後3 ヵ月以降に再建手術を行う症例において、稀ではあるが手術前に自然修復する可能性に配慮した理学療法を行う価値がある。