主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
p. 134-
【はじめに】整形外科クリニックでは、愁訴など精神心理的問題などに遭遇することが多々ある。一方で、その問題にどう対応するかについてはテーマとして扱われてこなかった。今回、整形外科クリニックで起こりうるこれら問題に対して、理学療法士がどう対応しているか、経験年数別に分析したため報告する。
【倫理的配慮】本研究は、当院倫理委員会の審査を受けている。
【方法】整形外科クリニックに勤務する29 施設280 名の理学療法士に対し、質問紙を送付し回答を得た。調査内容は、年齢、性別、経験年数、精神的問題の経験の有無、対応方法などである。対応方法は、「傾聴」「自主トレーニングへの移行」「所見との乖離を説明」「特に対応しない」「担当変更」「医師の診察へ戻す」「他科を薦める」「その他」を複数回答で選んで、成功したかどうかについて記載を求めた。
【結果】回答率は218 名77.1%であった。回答者の属性は、男性164 名、女性54 名、経験年数平均5.3±4.4 年、平均年齢28.7±5.1 歳で、75.5%が精神心理的問題を経験していた。年代は若手:1-5 年目(137 名)、中堅:6-10
年(52 名)、ベテラン:11 年以上(27 名)に分けて集計した。対応は若手では8 項目7 項目、中堅では8 項目中6 項目、ベテランは8 項目中3 項目のみで悪化例を認めた。どの年代でも、「担当変更」は成功率が高かった。
【考察】今回、悪化例を経験する項目が年代を追うにしたがって減少しており、経験を重ねることで対応が熟達している可能性が示唆された。一方で年代を問わず「所見との乖離を説明」については悪化例が多く、特に中堅・ベテランは若手よりも悪化例を多く経験していた。これは、難渋例を多く担当しているということが影響していると考えられる。
今後さらに研究を重ね、対応方法の熟達度を向上させるためのプロセスを明確にできるように進めていきたい。