主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
p. 142-
【目的】投球肘障害において、過去の肘痛は肘痛発生危険因子のひとつであると報告されている。本調査の目的は、高校生野球選手において過去の肘痛の有無と身体的特徴の関連を検討することである。
【対象と方法】対象者は、平成27 年に野球肩・肘障害メディカルチェックに参加した栃木県内の硬式高校野球部1 年生のうち、現在肩と肘に痛みがない41 名(身長171.7±5.2cm、体重66.4±7.7kg)である。対象者をアンケート結果に基づき、過去肘痛あり群(以下あり群)8 名(身長172±4.1cm、体重66.1±6.0kg)と過去肘痛なし群(以下なし群)33 名(身長172±5.4cm、体重66.5±8.3kg)の2 群に分類し比較検討した。評価項目は11 項目であり、肩関節機能評価として、肩関節最大外旋可動域(以下MER-A)、肩関節2nd 外旋可動域、肩甲骨内転柔軟性、前腕機能評価として、握力、手内在筋機能評価として、母指・小指ピンチ力、下肢体幹機能評価として上体反らし、腰割り、開脚、SLR を測定し、環境因子評価として、アンケートから平日と休日の練習時間を調査した。統計学的処理にはR3,2,4 による2 標本ウィルコクソン検定を用い、有意水準は5%未満とした。尚、ヘルシンキ宣言に沿って事前に配布した検診内容の案内書に研究目的を明記し、同意に基づき倫理的配慮を行った。
【結果】11 項目のうち2 群間で有意差があったものはMER-A のみで、あり群150°(135°-161°)なし群
160°(150°-170°)(p=0.009)であった。
【考察】笹沼らは高校生硬式野球選手の肘障害と過去の肘障害の関連を報告している。一方で過去の肘障害と身体機能との関連に関する報告は少ない。本調査の結果より高校生野球選手においてMER-A が投球肘障害の再発リスクに関係している可能性が示唆された。宮下らは肘関節のスポーツ障害は隣接する関節の機能低下の影響を受けると報告しており、MER-A 低下は肘関節外反ストレスを増大させるひとつの指標になると考えられた。