主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】我が国では病院の情報と義肢装具士の情報が単一施設に集約されていないことが多く、切断者の統計資料が少ないのが現状である。当院では、入院中の患者の基礎情報、評価結果、義肢製作時の義肢に関する情報を入出力できるデータベース(以下:DB)を活用している。今回、当院で使用しているDB をもとに切断者が入院中に測定した10m 歩行時間を個人因子の違いによって比較・検討したので報告する。
【方法】対象は片側下肢切断者88 名(男性69 名、女性19 名)とした。統計解析は、まず大腿切断者(46 名)と下腿切断者(42 名)に分け、切断原因が外傷(43 名)と疾病(38 名)の2 群間、切断時の年齢が65 歳未満(67 名)と65
歳以上(21 名)の2 群間の10m 歩行時間を対応のないt 検定を用いて比較した。解析ソフトはSPSS Statistics Version 22.0 を使用し、有意水準は5%未満とした。本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者の保護には十分留意し、当院の規定に準じて十分な説明と同意を得て実施した。
【結果・考察】切断原因の違いによる10m 歩行時間の比較では、下腿切断者では2 群間に有意な差が認められなかった。一方、大腿切断者では、切断原因が疾病の群が外傷の群に比べ、有意に大きい値を示した(p<0.01)。今回の結果から、下腿切断では切断原因の違いによる10m 歩行時間への影響は認められなかった。しかし、大腿切断では膝関節がないことで、義足歩行の難易度が高くなり、より高い身体機能が必要となるため、全身状態が悪く二次的障害を持っていることが多い疾病による大腿切断者は大きい値を示したと考えられる。年齢の違いによる結果は大腿切断者、下腿切断者ともに65 歳以上の群の10m 歩行時間が大きい値を示した(p<0.05)。今回の結果は、概ね臨床の見解と一致しており、臨床の見解を数値として実証できたと思われる。