主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
p. 28-
【目的】肺腺癌の腰椎・骨盤への多発骨転移による病的骨折のリスクに対し前医で高度のADL 制限を受けた統合失調症患者の理学療法を経験した。精神科での癌治療及び理学療法実施にて大幅なADL の改善ができた為、ここに報告する。
【症例紹介】10 歳代中頃より精神科通院歴のある妄想型統合失調症の60 歳代男性。
【倫理】患者本人の了承と当院倫理委員会の承諾を得た。
【経過】X 年に著明な腰痛で歩行困難となり当院入院。整形外科医診察の結果、腰椎・骨盤の腫瘍性病変を指摘。
数日後、他院へ転院し左肺腺癌・転移性骨腫瘍の診断となる。原発巣に対する積極的治療の適応なしの判断と腰椎・骨盤の病的骨折の強い懸念ありギャッジアップ60°までの安静度となる。転移巣に対する30Gy/10Fr の放射線治療と体幹硬性コルセット作製後、22 日後に当院再入院となる。入院10 日後よりリハ開始。初期評価はEastern Cooperative Oncology Group (ECOG) Performance Status Scale(以下PS) 3、Karnofsky Performance Scale(以下KPS)40%、B.I30 点、股関節・膝関節に軽度のROM 制限、両下肢に運動時痛及びL3・L4 領域に不全麻痺、L1 以下に痺れを伴う異常感覚と中等度鈍麻あり。当院にて経口抗がん剤使用を開始し、この奏功により転移巣の融解像は骨化改善し入院171 日目には軟性コルセットへ移行する。入院179 日目には足部に軽度の感覚障害は残存したがPS1・KPS70%・B.I95 点に改善。その後は自主練習を中心に継続し、入院420 日目にグループホームへ退院する。
【考察】患者がより高いbenefit を得る為に、当院の各科が専門性を活かして協業しながら必要最大限の治療提供をしたことにより、患者は前医で高度のADL 制限を受けていたが大幅なADL の改善を果たすことができたと考える。
そして、治療者として患者が重篤な状況にあっても患者の希望を尊重しながら、最大限人間らしく生きるための選択枝を共に模索していくことの重要性を改めて学んだ。