主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】腹臥位股関節伸展テストは腰椎骨盤帯の安定性評価として用いられ,股関節・体幹伸筋群の活動開始時間により股関節伸展運動の際の筋活動パターンを判別する.健常者を対象とした先行研究では大殿筋が最後に活動するという報告や,一定のパターンはなく対象者毎に多様性があるとした報告があり,見解は一定していない.本研究では大殿筋を上部線維と下部線維に分け,より詳細に腹臥位股関節伸展運動時の股関節・体幹伸筋群の活動開始時間を測定し,健常者における筋活動パターンを検討する事を目的とした.
【対象】対象は健常男性11 名とした(20.8±0.7 歳).本研究は,平成27 年度首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認(承認番号15065)を得て行った.
【方法】測定は表面筋電計(WEB-1000,日本光電社製)を用い,腹臥位にて膝伸展位で股関節伸展を行わせた際の両側脊柱起立筋,両側多裂筋,測定側大殿筋上部・下部線維,測定側半腱様筋・大腿二頭筋の筋活動を測定した.データは整流平滑化し,安静時の平均振幅+3SD を50msec 以上持続して越えた点を筋活動開始時間と定義した.測定は軸足側で行い,各筋の活動開始時間は半腱様筋を基準に標準化し,3 回の平均値を解析に用いた.統計解析はSPSSver.23.0 を用い,一元配置分散分析及びTukey の多重比較法を有意水準5%にて実施した.
【結果】各筋の活動開始時間に有意差を認め,大殿筋上部線維が両側脊柱起立筋・両側多裂筋よりも遅く活動開始していた.その他の筋の活動開始時間は有意差を認めなかった.
【考察】本研究より,健常者における腹臥位股関節伸展運動時の股関節・体幹伸筋群の筋活動パターンについて,大殿筋は筋線維毎に活動パターンが異なっていた.上部線維では脊柱起立筋・多裂筋よりも遅く活動し,下部線維においては一定のパターンはなく対象者毎に多様性があった.これは,大殿筋の上部・下部線維の機能的な相違が要因として考えられる.