主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2019/10/26 - 2019/10/27
【はじめに】脳卒中後の歩行再建に際し,下肢装具の使用が推奨される.この下肢装具による高頻度な歩行訓練の実現には,対象者の体格に適した装具が望ましいとも言われる.今回重度片麻痺患者に対し,本人用の長下肢装具を使用した積極的な歩行訓練を実施し,歩行での在宅復帰に至ったため報告する.
【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき発表に際して十分な説明を行い,書面にて同意を得た.
【症例紹介】左内包後脚に脳出血を発症した60歳代女性.自転車走行中に発症し急性期病院に入院,第18病日に当院回復期病棟へ転院.病前ADLは屋内外自立,賃貸アパート1階に夫・息子と在住.本人より歩行での在宅復帰の希望があった.
【経過】初期評価では右のBrunnstrom recovery stage (BRS)はⅠ-Ⅰ-Ⅱ,SIAS運動項目(SIAS-m)にて0-0,0-0-0,表在・深部覚ともに軽度鈍麻であった.筋緊張は脊柱起立筋・左下腿三頭筋で高緊張,腹直筋・腹斜筋・前脛骨筋で低緊張を認めた.FIMは74点であった.歩行は金属支柱付短下肢装具(AFO)と二―ブレースを使用し後方中介助で行っていたが,本人用の長下肢装具(KAFO)を作製方向となった.抗重力位での活動向上を目的に立位訓練およびステップ訓練,KAFOを使用した2動作前型での積極的な歩行訓練を主に実施した.経過を見てAFOへのカットダウンも行い,股関節伸展筋の賦活,側方への重心移動に対して介入した.最終評価は右下腿三頭筋が亢進するも,BRSはⅢ-Ⅱ-Ⅲ,SIAS-m は2-1A,1-2-1となった.FIMは111点となった.歩行は反張膝が残存するもT字杖とAFOを使用し自力で歩行可能なレベルとなり,第138病日に独歩にて在宅退院に至った.
【考察】本症例はKAFOを使用して高頻度な2動作前型での歩行訓練や,荷重下での機能訓練を重点的に行ったことでカットダウンに至った.AFO使用下では股関節伸展筋の賦活,円滑な重心移動の促通を重点的に行った.これにより,本症例は独歩にて在宅復帰に至ったと考える.