関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: F-040
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フレッシュマン
Contraversive Pushing を呈した患者に対し, 前頭連合野の機能を考慮した介入で介助量軽減が図れた一症例
横田 大輔
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抄録

【はじめに】今回,Contraversive Pushing(Pushing)を呈した右視床出血の患者に対し,前頭連合野へのネットワークを考慮した介入により Pushing が改善し,介助量軽減が図れたため以下に報告する.尚,本報告は本人の同意を得ている.

【症例紹介】87 歳女性.脳室穿破を伴う右視床出血を発症した.既往歴に右小脳出血があり,要支援 2 の状態であった.

【初期評価:1 〜6 病日】意識:清明.Stroke Impairment Assessment Set(SIAS):37点(感覚項目 1 点).Brunnstrom recovery stage(BRS):全てⅡ.基本動作:重度介助.Functional Independence Measure(FIM):44 点.Scale for Contraversive Pushing(SCP):6 点.

【経過】4 病日,歩行に対し恐怖心の訴えがあった.そこで,まずは起立練習や長下肢装具を使用して直立位を促した.立位時は視覚と前庭系を利用し,対称的な姿勢を意識する練習を実施した.一時的に Pushing の改善があり,歩行に対する恐怖心も軽減されたため,長下肢装具を使用した歩行練習へ移行した.その日以降,姿勢改善を図ってから歩行練習を行うようにした.

【最終評価:35 病日】SIAS:49 点(感覚項目 2 点).BRS:上肢Ⅱ,手指Ⅳ,下肢Ⅳ.基本動作:歩行以外は支持物使用して見守り.FIM:84 点.SCP:0 点.

【考察】本症例の Pushing が生じた要因として,体性感覚と前庭迷路系,大脳小脳運動回路,皮質橋網様体路の損傷が考えられた.また,歩行に対する恐怖心は,非対称的な姿勢から得られた感覚情報が前頭連合野の機能を混乱させたことにより生じたと考えた.そこで,上記経路の賦活を図るため,長下肢装具を使用して対称的な姿勢を促し,頭頂連合野から前頭連合野へ送られる感覚情報を整理させることを中心に行った.その結果,歩行練習などの動的な課題に対しても恐怖心が軽減し,Pushing 改善や介助量軽減に繋がったと考える.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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