主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2019/10/26 - 2019/10/27
【はじめに】近年,転倒と転倒恐怖感との関連が注目されているが,その評価指標は臨床において頻用されていない.転倒恐怖感を持つ超高齢患者に対し動作練習を中心に介入したところ,Modified Falls Efficacy Scale (MFES)の特定の項目が改善したため報告する.
【説明と同意】本発表はヘルシンキ宣言に基づき,本症例に説明し同意を得た.
【症例情報】症例は急性心筋梗塞にて入院となり,保存療法を施行した90代男性である.以前はシルバーカー歩行にて買い物をしていたが,約1年前の転倒より活動範囲が敷地内に狭小していた.11病日に昇圧薬が終了し,積極的離床を開始した.24病日時点で膝伸展筋力は9.2/14.7kgf(Rt/Lt),Berg Balance Scale(BBS)は38/56点,Maximum walking speed(MWS)は0.56m/s,Functional Independence Measure(FIM)は88/126点(ポータブルトイレ見守り),MFESは72/140点,改訂長谷川式簡易知能評価スケールは23/30点であった.
【経過】本症例は超高齢であり,急性心筋梗塞による心機能の低下を考慮し,大きな身体機能の改善は見込めないと予想した.また,MFESの結果を考慮し,病前の日常生活動作(ADL)に合わせた屋内歩行やトイレ動作練習を中心に介入した.32病日に病棟トイレ使用・自室内移動が自立し,ADL自立度が改善した.33病日時点では,膝伸展筋力は12.2/18.8kgf(Rt/Lt),BBSは46点,MWSは0.86m/s,FIMは105点,MFESは65点となった.MFESでは自宅退院後に自立して行う「衣服の着脱を行う」,「椅子に掛ける・椅子から立ち上がる」,「家の中の廊下や畳の上を歩き回る」,「戸棚やタンス・物置のところまで行く」の4項目が大きく改善した.
【考察】本報告は超高齢患者に対し,動作練習中心に介入することによりMFESの特定の項目やADLが改善した.高齢者における転倒恐怖感の存在は身体活動量が低下するとされており,転倒恐怖感の改善は活動量拡大に影響し,心疾患の再発や筋力低下の予防に繋がると考えられる.