主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2019/10/26 - 2019/10/27
【目的】歩行速度の低下や非対称性,最大発揮筋力の減少など歩行の欠陥が潜在的に患者の安定性を低下させ,転倒リスクの増加,歩行関連の疲労の増加,歩行効率の低下を引き起こす.歩行速度は脳卒中患者の地域社会での移動能力の予測因子とされ,近年,様々な疾患を対象として簡易的な歩行解析装置を用いた研究がなされている.しかし,慢性脳卒中患者の歩行速度に影響する要因については十分に検討されていない.そこで,本研究では慢性脳卒中片麻痺患者を対象に,簡易歩行分析システムによって測定された歩行指標と歩行速度の関連を検証した.
【方法】対象は慢性脳卒中片麻痺患者30名とし,それぞれの自由歩行を,簡易歩行分析システムを用いて測定した.測定項目は,歩行指標である歩行時健側・麻痺側の床と足部の最大距離(FH),足部の側方移動距離,股関節・膝関節屈曲-伸展角度,足関節背屈-底屈角度,踵接地時の床面と足底角度,つま先離地時の床面と足底角度 (TOA)とした.統計解析は従属変数を歩行速度,独立変数を歩行指標としたステップワイズ法による重回帰分析を行なった.有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】今回の発表に際し筆頭演者所属施設の倫理委員会の承認を得ている(承認番号:2018039).
【結果】相関係数は,麻痺側FHとTOA,健側の足関節最大背屈角度と足関節最大底屈角度がr=0.9(p<0.01)であった.重回帰分析で有意な関連要因として抽出された因子は,麻痺側TOA(p<0.01),麻痺側と健側の股関節最大伸展角度(p<0.01),健側膝関節最大屈曲角度(p<0.01)であった(R2=0.77).
【結語】本研究の結果から麻痺側TOAと,麻痺・健側最大股関節伸展角度,健側膝関節屈曲角度の増加が歩行速度向上に影響する事が明らかとなった.今回の結果は歩行速度向上を目的とした治療の一助になると考える.