関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: P-055
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心疾患と呼吸器疾患を合併し、重複障害を抱えた症例への理学療法の経験
舩戸 瑞穂須賀 正伸山崎 友昭金谷 崇文白倉 賢二
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抄録

【目的】高齢化に伴い重複障害を抱える患者は多く、互いの疾患が影響し合うためリハビリテーション(以下リハ)を実施する際に難渋することが多い。今回、複数の既往歴をもつ心・呼吸器疾患患者に対し各疾患に分けて考察・治療することで自宅復帰に至った症例を経験したため報告する。

【症例・経過】80歳代の女性で身長145cm、体重40.1Kg、BMIは19.07であった。診断名は心不全、急性呼吸窮迫症候群(以下ARDS)、既往歴には慢性腎臓病など複数の内部障害と脂質異常症などの冠危険因子や冠動脈バイパス術の既往があり、動脈硬化による全身疾患のリスクを有していた。現病歴は、X日に呼吸困難が出現し当院に入院した。心不全に対し投薬、ARDSに対し呼吸補助装置とパルス療法にて状態は改善したが、廃用が進みX+41日目にリハ開始となった。リハを実施するにあたり心・呼吸器疾患、廃用症候群をワッサーマンの歯車に当てはめてプログラムを検討した。心疾患に対しては運動による自律神経系の安定、呼吸器疾患に対しては呼吸換気率向上に有効であるコンディショニング、骨格筋に対しては最大酸素摂取量の向上を目的とした有酸素運動、筋力向上を目的としたレジスタンストレーニングにて運動耐容能の向上を図り、歯車が動きやすくなるよう進めた。活動量の向上に伴い、消費エネルギー量も増加したため摂取カロリーの増量を提案した。経過中、感染により心不全が悪化した。本人は積極的なリハの継続を望んだが中止基準に則り、愛護的に進めたことで心不全の悪化は回避できた。X+85日目に在宅酸素療法導入して自宅退院となった。

【考察】本症例は複数の既往歴があり、リスク管理とともに病態に則したリハを展開する必要があった。重複障害を有していたが疾患別に整理することで病態を捉えやすく、負荷量や運動の種類の選択を目的に沿って実施することができた。

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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