関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
会議情報

ポスター
P1-5 関節内複合損傷を伴わない非侵襲的な前十字靭帯損傷モデルの開発
高畠 啓荒川 航平小曽根 海知村田 健児金村 尚彦国分 貴徳
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 130-

詳細
抄録

【目的】変形性膝関節症や前十字靭帯(ACL)損傷の病態解明に用いられるACL 切断(ACL-T)モデルは,関節包の切開を伴うため関節内環境に大きな変化が生じてしまう.その後関節包の切開を伴わない非侵襲的なモデルが開発されるも,ACL を切断する際に他の関節内損傷を惹起してしまう問題があった.そこで本研究では,関節内損傷が生じない新たな非侵襲的ACL-T モデルを開発することを目的とした.

【方法】C57BL/6 雄性マウス7匹を膝関節屈曲90°に固定し,徒手的に大腿骨課部を長軸方向に押し込むことでACL-T モデルを作成した.モデル作成後,対側肢を対照群として両膝関節を採取し,軟X-ray による脛骨前方偏位量,India Ink 染色による軟骨損傷のスコアリング,μCT を用いた膝関節の形態学的解析を実施した.本研究は所属施設の動物実験倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号2020-6).

【結果】ACL-T 群では脛骨の前方変位量が有意に拡大していた(p=0.001).一方で,India Ink 染色によるスコアリング(大腿骨:p=0.5,脛骨:p=1),μCT による軟骨下骨の骨量(大腿骨:p=0.46,脛骨:p=0.76),骨梁幅(大腿骨:

p=0.68,脛骨:p=0.42),骨梁数(大腿骨:p=0.78,脛骨:p=0.84),骨梁間隙(大腿骨:p=0.37,脛骨:p=0.56)では両群に有意差は見られなかった.また,μCT を用いた巨視的観察により,押し込んだ大腿骨前面および接触しやすい関節面後方で形態学的差は見られなかった.

【考察】従来の非侵襲的モデルでは軟骨摩耗や微小骨折を併発させてしまうため,関節包内に様々な要因が混在していた (B.A. Christiansen et al, 2015).しかし本研究では,大腿骨を長軸方向に押し込むことで脛骨の前方偏位を誘発したため,ACL 切断に際して関節軟骨表面と軟骨下骨における関節内損傷を伴わなかった.以上の結果から,本研究で開発したモデルはACL 切断のみを惹起した適切な動物モデルであることが示唆された.

著者関連情報
© 2021 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top