主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2021/09/04 - 2021/09/05
p. 173-
【目的】膝関節の関節液内の白血球数は膝関節の状態を反映し,炎症性疾患は5000cell/μL 以上,感染性疾患は
50000cell/μL以上等の基準がある.変形性膝関節症において関節液内の白血球数が疼痛や患者立脚型膝評価と関連があるのか定期的に関節穿刺を行っている症例から検討した.
【方法】対象は80 歳代男性.2 年前より膝関節痛が出現し,両変形性膝関節症と診断された.関節水腫が強く,両膝関節の定期的な関節穿刺を実施している.対象者から関節穿刺により採取した関節液内の白血球数を倒立顕微鏡
(Primovert,ZEISS 社)とBurker-Turk 血球計算盤を用いて位相差観察法にて倍率100 倍で観察し,カウントした.疼痛はVisual analogue scale(VAS),Pain catastrophizing scale(PCS)にて評価し,患者立脚膝評価としてKnee injury and Osteoarthritis Outcome Score(KOOS)を実施した.本研究はヘルシンキ宣言に則り,書面にて対象者に同意を得て実施した.
【結果】VAS の結果(右/左)は,安静時が33/52mm,動作時が28/45mm,夜間時痛が35/50mm であった.PCS は
33 点,KOOS は総合点が58.3 点であった.また,関節液内の白血球数は1105/1375 cell/μL であった.別日では疼痛は著変なしの訴えであったが,関節液内の白血球数は6520/13300 cell/μL であった.
【考察】疼痛やKOOS は同程度の症状で変動が少ないものの,関節液の状態は白血球数が左右ともに1000cell/μL 前半の状態や5000cell/μL を超えて炎症の基準に当てはまる状態になるなど幅広い変動があった.つまり,関節液内の白血球数と疼痛等の所見は必ずしも一致しないことが推測された.一致しない要因はPCS が30 点以上であるため疼痛の認知面の問題なども考えられるが,本研究では明らかにできなかったため,今後の課題としてさらに調査していく.
【結論】変形性膝関節症の症例において関節液内の白血球数は疼痛や患者立脚型膝評価と関連しない可能性が示唆された.