主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2021/09/04 - 2021/09/05
p. 174-
【はじめに】同一筋に対するストレッチングでも肢位や運動順序が変化することで伸張される部位が変化することが報告されている。しかし、ストレッチングの効果や持続時間など詳細な効果を検討した報告は少ない。本研究ではストレッチング肢位や運動順序の変化が大腿直筋のストレッチング効果に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】運動習慣のない健常成人男性7 名を対象とした。大腿直筋のストレッチングは同一被験者の利き足に対して膝関節屈曲(120 度)→股関節伸展(0 度)、股関節伸展(0 度)→膝関節屈曲(120 度)の2 通りの方法で60 秒間実施した。ストレッチング前、ストレッチング後0 分、5 分、10 分、15 分時点の大腿直筋の筋腱移行部の移動量を計測することでストレッチングの効果判定を行った。筋腱移行部の移動量の計測は超音波画像診断装置を使用し、撮像に習熟した1 名の検者が行った。各計測は5 日間以上間隔をあけて実施した。統計処理はストレッチング肢位と時間経過の二要因による反復測定の二元配置分散分析を行い、主効果や交互作用を認めた場合には事後検定として多重比較を行った。
【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき十分な説明を行い、同意を得て実施した。
【結果】時間経過に有意な主効果を認め、多重比較を行った結果、ストレッチング直後に筋腱移行部の移動量が最も増大し、その後時間経過とともに減少した。また、15 分経過してもストレッチング前より筋腱移行部の移動量は大きかった。一方で、ストレッチング肢位に有意な主効果は認められず、有意な交互作用も認められなかった。
【結論】大腿直筋に対して肢位や運動順序の異なる手順でストレッチングを行っても得られる効果に差異がないことが明らかとなった。臨床現場において、大腿直筋に対してストレッチングを行う際は、対象者の状態に応じてストレッチング方法を使い分けても同等の効果が得られる可能性が示唆された。