主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2021/09/04 - 2021/09/05
p. 29-
【目的】立位での異なる体幹肢位における健常者の腰部多裂筋の組織血流量を経時的に測定し,腰痛の原因になりうる筋血流量の変化を検証することを目的とした.
【方法】対象者は,過去に腰痛症状のない健常な男女12名(男7名,女5 名,平均年齢20.9±0.4)とした.携帯型近赤外線組織血液酸素モニター装置(NIRS)を用い,第5 腰椎-第1 仙椎間の腰部多裂筋のヘモグロビン濃度変化
(組織血液量:以下total-Hb,組織酸素化血液量:以下oxy-Hb)を,体幹中間位,屈曲60 度(以下屈曲位),伸展
20 度(以下伸展位)で測定した.対象者は3 秒間かけて,立位中間位から屈曲位もしくは伸展位に動作を行ってもらい,その肢位を30 秒間保持させた.腰部多裂筋のoxy-Hb およびtotal-Hb の変化をそれぞれ中間位,肢位直後,
10 秒後,20 秒後,30 秒後で測定を行い,その差の比較を行った.
【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に則り,全対象者に研究内容の説明を行い,書面で研究への参加の同意を得た上で実施した.
【結果】屈曲動作では,腰部多裂筋のtotal-Hb で,中間位から屈曲位保持までに,有意な減少(p=0.01)を認めた.oxy-Hb では,中間位から屈曲位保持までおよび,屈曲位保持20 秒から30 秒後において,有意な減少(p=0.008,
p=0.003)を認めた.しかし他の測定時には有意な差を認めなかった.伸展動作では,腰部多裂筋のtotal-Hb で,中間位から伸展位保持および,伸展位保持直後から10 秒後に,有意な増加(p=0.003,p=0.003)を認めた.oxy-Hb では,伸展位保持直後から10 秒後に有意な増加(p=0.002)を認めた.しかし他の測定時には有意な差を認めなかった.
【考察・結論】立位での体幹屈曲動作では,動作開始直後から屈曲位保持までに,腰部多裂筋のtotal-Hb およびoxy-Hb が減少することが示唆された.立位での体幹伸展動作では,伸展肢位保持後から10 秒後まで,腰部多裂筋のtotal-Hb およびoxy-Hb が増加することが示唆された.