関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O5-4 投球時に右肘内側および外側部に疼痛を訴える中学生野球選手の一症例
池津 真大兼岩 淳平竹内 大樹
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キーワード: 投球障害肘, 肘痛, 小胸筋長
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p. 34-

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抄録

【はじめに】今回,我々は投球時に右肘内側および外側部に疼痛を訴える中学生野球選手の症例を経験したので報告する.

【倫理的配慮】本報告は「ヘルシンキ宣言」を遵守しており,本症例には発表の趣旨を十分に説明し同意を得た.

【症例】14 歳,男性,キャッチャー.現病歴は,2020 年11 月中旬に投球30 球程度行った際,徐々に右肘内側および外側部痛が出現.その後も投球時痛があり,リハビリ開始となった.主訴は,投球時のlate cocking~acceleration phase にかけての右肘内側および外側部痛であった.画像所見では,X 線,MRI,US いずれも異常所見を認めなか

った.肩水平外転位での肩外旋強制で疼痛の再現がされ,肩甲骨後傾誘導でNRS6 から2 に疼痛軽減した.圧痛は,前腕屈筋群,尺骨神経,橈骨神経,小胸筋,肋鎖間隙に認めた.アライメントは,右肩甲骨外転・下方回旋,胸椎後弯角34°であった.右小胸筋長は9.8cm,左小胸筋長は11.5cm であり,右小胸筋長の短縮を認めた.右肘関節可動域は屈曲90°,伸展0°であり,疼痛による制限を認めた.右肩甲骨周囲筋筋力はMMT4 であった.整形外科テストは,尺骨神経伸張テスト,Wright test,Roos test 陽性であった.治療は右肩甲骨マルアライメント改善を目的とした介入を行った.治療介入1 週間後には,圧痛消失,右小胸筋長11.9cm,右肘関節屈曲140°,全ての整形外科テストが陰性となった.

【考察】本症例は,投球時に右肘内側および外側部に疼痛を訴える中学生野球選手であった.先行研究では,オーバーヘッドスポーツ選手の肘痛と胸郭出口症候群に関係性があることが報告されている.胸郭出口症候群の絞扼部位には,斜角間隙,肋鎖間隙,小胸筋下間隙があり,本症例は小胸筋下間隙での絞扼が肘痛の主原因であると考えられた.今後は本症例の結果を基に,野球選手における肘痛の原因を解明していく必要がある.

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© 2021 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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