主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2021/09/04 - 2021/09/05
p. 36-
【目的】骨粗鬆症は骨折のリスクを高め,骨折を生じるとADL・QOL が低下することが報告されているが,大腿骨近位部骨折術後の歩行能力への影響については明らかでない.大腿骨近位部骨折術後の歩行能力と骨粗鬆症の関連を調査した.
【方法】対象は2018.4~20.3 に入院した大腿骨近位部骨折症例175 名(男性29 名,女性146 名,平均年齢83.2±
8.6 歳)とした.受傷前車椅子の症例は除外した.退院時の歩行能力により,歩行群99 名(平均79.9±8.1 歳)と車椅子群76 名(平均87.6±7.3 歳)の2 群に分類,さらに歩行群を,杖自立群57 名,歩行器自立群18 名,歩行器介助群24 名の3 群に分類した.調査項目は,大腿骨頚部の骨密度(大腿骨BMD),年齢,受傷前歩行能力,歩行群の最終的な歩行手段を獲得するまでの期間(歩行獲得期間)とした.統計学的検討は,ピアソンの相関係数,t検定及び一元配置分散分析を用い,有意水準は5%とした.尚,本研究は当院の倫理規定に則り行った.
【結果】歩行群と車椅子群の比較では,大腿骨BMD は歩行群0.615±0.129g/cm2,車椅子群0.536±0.111g/cm2
であった.両群とも骨粗鬆症に該当し,車椅子群は有意に低かった.さらに歩行群内の比較では,杖自立群0.635±
0.125g/cm2,歩行器自立群0.609±0.113 g/cm2,歩行器介助群0.572±0.143 g/cm2 であり,有意差を認めなかった.受傷前歩行能力は,歩行群は全例自立(フリーハンド81 名,杖12 名,歩行器6 名)であったのに対し,車椅子群は自立66 名(フリーハンド39 名,杖16 名,歩行器11 名),歩行器介助10 名であった.年齢と歩行獲得期間及び大腿骨BMD はそれぞれ有意な相関(r=0.45, r=-0.41)を示したが,大腿骨BMD と歩行獲得期間は相関が見られなかった.
【結論】大腿骨近位部骨折術後の歩行能力と骨粗鬆症は,歩行が可能であるか,車椅子レベルかには関連するが,自立の可否や補助具の種類など歩行手段には関連しない可能性が考えられた.