主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2021/09/04 - 2021/09/05
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【目的】脳卒中片麻痺者の歩行自立度の評価としてFunctional Ambulation Category(以下,FAC)がある.FAC は臨床研究のアウトカムとして既に使用されているが,少なくとも評価者の主観的な要素がスコアに反映されていると予測できる.本研究では,FAC 評価の再現性を確認するために多施設共同研究で得られた患者データを解析し,考察した.
【方法】対象は急性期脳卒中片麻痺者22 名で,介入群ではHAL 歩行,対照群では平地歩行を週3 回合計9 回(3 週間)実施し,研究開始後1 週間ごとに主要評価項目であるFAC を計4 回計測した.FAC 評価は,2 名のPT によりそれぞれ実施した.さらに,第3 者(本研究に関与していないPT3 名)による歩行動画を用いたFAC 評価も実施した.FAC 評価の一致度の確認のために,重み付きカッパ係数(k)を算出した.
【倫理的配慮】本研究は,筑波大学附属病院の臨床研究倫理審査委員会の承認(H27-257)を得て実施した(データベース登録番号:UMIN000022410).また,参加者に対して書面にて研究参加についての同意を得た.
【結果】2 名のPT によるFAC スコアの一致度は,k = 0.977 であり評価者間での一致を確認できた.さらに,第3 者PT によるFAC スコアの一致度は,評価者と第3 者A はk = 0.918,評価者と第3 者B はk = 0.953,評価者と第3 者C はk = 0.921 といずれも,k = 0.81~1.00 の範囲内であり判定基準においても「非常に良好」という解釈ができ,評価者間で一致していた.一方で,ビデオ評価者から「バランス・体重の支持の判別,歩行監視と歩行自立の判断が難しい」というコメントを得た.
【考察】急性期脳卒中片麻痺者の歩行自立度の評価指標としてFAC を用いることは再現性が高く、第3 者評価の結果と比較してもある程度客観性が保たれた評価指標である可能性が示唆された.
【結論】FAC は急性期脳卒中片麻痺者においても評価の再現性が高く,実臨床や臨床研究でも活用できる歩行評価指標となる可能性がある.