抄録
【はじめに】
「人工呼吸管理の長期化に伴う不活動は,筋の組成変化をもたらし,
動作能力の低下を招く」と報告されている.今回,10日間の人工
呼吸管理を要した患者に対し,平均4.5単位/ 日の介入時間をかけ
呼吸理学療法,ベルト電極式骨格筋電気刺激法(以下B-SES),早期
離床の集中的な介入を実施した.その結果,病前の歩行能力を維持し
ECU 退室となったため報告する.
【症例】
既往に脳梗塞があり,固定型歩行器で屋内歩行が自立していた70代
男性.
【治療経過】
X日,イレウス,誤嚥性肺炎,敗血症性ショックによりECU入室.
両肺の背側優位に浸潤影を認め,酸素化能の障害(P/F:59.6)を
認めた.またショックにて循環作動薬を要していた.X+4日,酸素
化能も改善傾向であったが喀痰量が多く,頻回な吸引を要していた.
集中的な理学療法介入に加え,看護師の協力の下,積極的な体位
ドレナージを行い,酸素化能は改善し,X+10日,抜管に至った.
X+15日,酸素需要もなくなりECU 退室.ADL は改善したが,
咳嗽能力が乏しく吸引を要していたためX+25日転院となった.
【理学療法経過】
X+1日より,循環動態が不安定だったため,体位ドレナージ,B-SES
を実施.X+4日,循環作動薬が漸減傾向となり端坐位を開始した.
X+10日抜管,歩行練習を開始.X+15日,歩行器を使用し軽度
介助にて30m可能となりECU 退室.X+25日,監視歩行が可能と
なった.
【考察】
本症例は既往に脳梗塞を有し廃用になりやすい状況であり,人工
呼吸管理による不活動にて更なる歩行能力の低下が危惧された.
しかし,早期から平均4.5単位/ 日の介入時間をかけ集中的な理学
療法を展開する事で,筋力低下を防ぎ歩行能力を維持出来たと考え
られる.
【結語】
超急性期において集中的な理学療法を提供し筋活動を促すことで,
歩行能力の維持に寄与出来る可能性が示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】
発表にあたり患者の個人情報とプライバシーの保護に配慮し,本人
から書面にて同意を得た.(承認番号:22-71)