抄録
【症例紹介】
慢性閉塞性肺疾患(COPD),誤嚥性肺炎の80代男性.X年Y月,呼
吸苦を感じ近医を受診,酸素化不良により当院に紹介入院された.
入院初日に自宅退院を目標に理学療法介入開始.その後胃潰瘍出血
を発症,貧血により呼吸苦が増強し悲観的な発言が多く,離床意欲
が低下していた.
【評価とリーズニング】
初期は酸素投与量3L/分,動作時の酸素飽和度(SpO2)82%,修正
Borgスケール8,Barthel Index(BI)40点,COPD Assessment
Test(CAT)34点,簡易栄養状態評価表(MNA)1点,Patient-
Specific Functional Scale(PSFS)0.6点,Vitality Index(VI)
3点だった.低栄養,意欲の低下により離床頻度が減少し,ADL能力
の低下を来していると考えた.よって,身体機能に応じた負荷量設定
と行動変容を促し,成功体験を重ねることで意欲の向上に繋がり,
能動的にリハビリに取り組むことで自宅退院を目指せるのではないか
と考えた.
【介入と結果】
低栄養の期間はベッド上での下肢運動やADL 動作練習に負荷量を
留めて過度にエネルギーを消費しないように努めた.入院前生活
と現状の乖離により悲観的な発言が多く聞かれたため,計画的行
動理論の考えを参考に傾聴と声掛けをして運動療法への能動的な
参加を促した.本人の意欲と血液データを元に適宜,運動負荷を
増加させた.最終的にはルームエアーで杖なし歩行連続160m,
動作時SpO2 89%,修正Borgスケール1,BI 70点,CAT 11点,
MNA 4点,PSFS 7.6点,VI 8点で自宅退院となった.
【結論】
COPDによる呼吸苦,ADLレベルの低下によって離床意欲が低下
していることに加え,低栄養に対するリスク管理を要する患者に
対し,行動変容や運動負荷量に配慮して介入したことで自宅退院に
繋がったと考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には十分に説明をした上で,自由
意思による同意を得た.