関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第42回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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一般演題
個人因子が積極的な介入を困難にさせた脳卒中の一症例
小笠原 寛臣
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キーワード: 脳卒中, 介入拒否, 個人因子
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p. P-042-

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抄録
【目的】 今回,リハ介入を拒否し積極的な介入に難渋した脳卒中患者を経験 した.脳卒中後の高次脳機能障害や精神症状がADLに影響する ことや個人因子が予後や転帰に影響すると考えられていることが 知られている.患者の個人因子が脳卒中後の心理面や活動,介入 に与えた影響について考察することにした. 【症例紹介】 左橋梗塞,右片麻痺,80歳台,女性.5病日にPT・OTを開始. 右Brunnstrom Recovery Stage 2.基本動作は全介助.麻痺に 対する悲観的発言があった.高次脳機能障はなく,生活面では 食事やベッド上でのセルフケアなど独力で可能な活動には参加し, 要望の依頼も行えていた.社会保障制度は支払いが煩わしいと 考え未納状態であり利用が不可能であった.HOPEは麻痺の改善 と動けるようになることであった. 【経過】 1期(介入開始後1~5週):麻痺や介入効果がないことを理由に身体 機能や動作能力の向上を目的としたPTを拒否した.またOTはセル フケアのみに参加した.2期(6~7週):現状に「飽きた」と訴えて 不定期で離床目的のPTに参加した.労力を費やす課題を拒否し, できる課題のみに参加した.3期(8~15週):「トイレが使えれば ね」との希望があり,トイレ使用を目標に起立や移乗,歩行,トイレ 動作などの課題を実施した.4期(16~39週):「右脚に力が入る ようになった,立ちやすくなった」などの成果を実感して拒否は消失 した.機能的自立度評価表:運動項目の自立度は1・2期に約2割 で停滞し,3期に約3割,4期に約4割に達し天井となった. 【考察】 将来を予測した行動に煩わしさを感じる個人因子は1期や2期の 結果を生じ,障害に対する苦悩の低減に時間を要したと推察さ れた.しかし,1期のセルフケア参加や2期のできる課題のみへの 参加は苦悩を低減し,3期に具体的な希望を挙げることに繋がった 可能性があった.反省として,拒否の原因を探るためには精神機能 評価と個人特性の評価を行い介入の検討を行うことが挙げられた. 【倫理的配慮,説明と同意】 当院倫理委員会の承認を得て患者に趣旨を説明し同意を得た.
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© 2023 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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