抄録
【目的】
患者-セラピスト双方が,患者背景を共通認識として持つことは
重要である.本研究の目的は患者-セラピスト間でICFで扱う生活
機能の問題の認識のずれ(以下,生活機能の認識のずれ)が,経時
的にどのように変化するのか明らかにすることである.
【方法】
A病院に入院中で研究に同意の得られた患者44名及び担当セラ
ピスト39名を対象に入院時,入院1ヶ月後,退院時の3時点で自記
式のアンケート調査を行った.健康に関する生活機能は,ICFリハ
ビリテーションセット(30項目)とし,問題の程度をvisual analog
scaleを用い患者・セラピスト双方から取得し,ずれの大きさを級内
相関係数ICC(2,1)から算出し,認識の一致を検討した.なお,
ICCが0.4以上の項目(有意水準は5%)を患者-セラピスト間の生活
機能の認識の一致した項目とした.
【結果】
ICCが0.4以上の項目は,屋内歩行(入院時0.7,1ヶ月後0.56,
退院時0.57)や更衣(入院時0.78,1ヶ月後0.45,退院時0.56)
等,移動やセルフケアの項目で多かった.経時的には,認識の一致
した項目数は入院時12個,入院1ヶ月後12個,退院時10個で
あった.
【考察】
ICCが0.4未満の項目が過半数存在し,患者-セラピスト間にお
いて生活機能の認識のずれが存在することが確認できた.認識が
一致した項目は,入院中の生活で「できる」・「できない」がはっきり
とする項目で多かった.一方,退院時におけるICFの「参加」に該当
する項目では認識の一致した項目は0個であり,退院時に患者セラピスト間での認識に相違があることが示唆された.経時的に
は,一致した項目数は改善しておらず改善すべき点があることが
示唆された.
【結論】
生活機能の認識にずれは存在し,経時的には減少していなかった.
患者-セラピスト間での生活機能や目標などを確認し共有する必要
がある.
【倫理的配慮,説明と同意】
対象患者及び,対象患者の担当セラピストに説明文書を用いて説明
し同意を得た.なお,本研究を実施するにあたり,茨城県立医療
大学の倫理委員会の承認を得た(承認番号 982).