抄録
【はじめに】
間歇性跛行を呈する下肢動脈疾患(lower extremity artery disease
以下 LEAD)患者に対するリハビリテーションの有効性はガイドラ
インに示されているが,通院が困難などの理由により監視下運動療
法の継続が課題と言われている.今回,病院への外来通院が困難
なLEAD患者に対する運動療法を訪問リハビリテーション(以下訪問
リハ)で実施する機会を得たので報告する.
【症例】
70歳台女性.診断名:左LEAD,既往歴:右包括的高度慢性下肢
虚血,右Ⅳ趾切断後,脳出血右片麻痺,糖尿病,深部静脈血栓
症,慢性腎臓病,高血圧,左変形性股関節症,要介護2.今回,左
LEADに対し,近医で左浅大腿動脈に対し,血管内治療を実施した
後に訪問リハビリテーション介入の運びとなった.血管内治療前の
足関節-上腕血圧比は右0.90/左0.45であった.
【経過】
本症例は,歩行時右下肢に短下肢装具を使用し,左上肢にロフス
トランド杖を使用していた.血管内治療前は8mで連続歩行困難で
あった.症例本人および担当ケアマネジャー,血管治療医より,
LEAD に対するリハビリテーションの要望があり,週1-2回の訪
リハスケジュールを組み,屋外歩行練習の自主トレーニングを指導
した.下肢筋の負荷を意識した筋力強化運動,歩行練習を中心に,
足部の観察,関節可動域運動を併せて実施した.訪問リハ介入時は
20m(下肢痛はNumerical Rating Scale7/10)であった.介入
から約2ヶ月で110mへと延長した.
【考察】
本症例は訪問リハにおいて運動療法を実施したが,下肢の創傷,
虚血症状の増悪を認めることなく,歩行距離の延長を得ることが
できた.在宅という限られた環境の中でも,LEADの運動療法の
原則に則り,リスク管理として足部の観察を行うことで安全に運動
療法を行うことができたと考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
症例に対し,本発表内容について十分に説明し,同意を得た.