抄録
【はじめに,目的】
拡散型圧力波 Radial Pressure Wave(以下RPW)は除痛と組織
修復効果があるとされ,ばね指に対し疼痛,ピンチ力改善に効果
的と報告されている.ばね指に対するステロイド注射での報告で
は,母指の治療効果はその他の指と比べて高いとされており,ば
ね指に対する治療効果は指別に差があるのではないかと考えた.
そこで,本研究の目的はばね指にRPWを実施し,疼痛軽減効果
を母指とその他の指で比較検討することとした.
【方法】
対象は当院を受診し,ばね指と診断を受け,RPWを実施した患者
11名11指とした.母指群(男性3名,女性4名,平均年齢62.6±9.9
歳)とその他の指群(中指3名,環指1名,男性2名,女性2名,平
均年齢64. 2±8. 6歳)に分類し,診療録より後ろ向きに調査した.
対象に対し,RPW(フィジオショックマスター,Gymna社製)を週
1回の頻度で,合計4回実施した.治療パラメーターは,母指群
は平均出力2.6±0.6bar,平均周波数13.3±2.6Hz,その他の指
群は平均出力3.0±0.8bar,平均周波数11.8±1.7Hzとし,照射回
数2,000発/回,圧痛部位に対して実施した.評価項目は,疼痛
評価として動作時の痛みをVisual Analogue Scale(以下VAS)を
用いてRPW介入前と4回介入後に実施した.介入前VASと介入後
VASを除したVAS比(%)を算出し,VAS改善率を比較した.統計
処理は母指とその他の指のVAS比に対し対応のないt検定を行い,
有意水準は5%未満とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院の倫理委員会の承認を得て行った(倫理番号 2463)
【結果】
RPW介入前VASは母指群55.9±25.1mm,その他の指群50.5±
25.2mmであった.介入1 ヶ月後VASは母指群27.3±20.1mm,
その他の指群51.5±32.2mmであった.VAS比は母指群48.8%,
その他の指群102.0%であり,母指群でVAS改善率に有意差を認
めた.
【考察】
ばね指症例に対し,RPWの効果を母指とその他の指で検討し,1ヶ
月の介入により母指の疼痛が改善した.結果より,母指に有効な
可能性が示唆され,ばね指に対するRPWの疼痛軽減機序は母指
とその他の指で異なる可能性があるのではないかと考えた.