関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P3-5-2
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一般演題
脛骨骨幹部骨折術後に関節可動域制限を呈し歩行獲得に難渋した一例
*中嶋 珠実
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抄録
【はじめに,目的】 一般的に脛骨骨幹部骨折は術後1 ~ 2 ヶ月間の免荷期間を要する. 増井ら(2007)は,脛骨骨幹部骨折は足関節背屈制限を呈する例 が多いと述べており,背屈制限は歩行やバランス機能に影響する とされている. 今回,主治医によるプレート追加術後より荷重制限なしとなった 症例を担当し,T字杖歩行自立を目標に足・膝関節の可動域に着 目し介入したため報告する. 【症例紹介,評価,リーズニング】 80代女性,X日に自転車走行中に転倒し,右脛骨開放骨折と診断. X+4日に骨接合術施行.主治医より術後安静度は2ヶ月間歩行器使 用と指示あり.骨接合の補強目的でX+20日にプレート追加術を施 行し荷重制限なしとなる.X+35日,地域包括病棟へ転院となった. 初期評価(X+5日)では,右膝関節屈曲120°,伸展0°,足関節背 屈-5°,歩行は患側荷重量の低下や恐怖心により困難であった. 追加術翌日(X+21日)より右膝関節伸展-15°の制限を認め,足・ 膝関節ともに筋・軟部組織性の制限であった.足関節の制限因子 は下腿三頭筋の柔軟性低下と距骨の可動性低下,膝関節伸展の制 限因子は,ハムストリングスの短縮とハムストリングス・腓腹筋交 差部の滑走性低下と考えた. 【倫理的配慮,説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に則り,書面と口頭にて説明を行い,同 意を得た. 【介入内容と結果】 筋・軟部組織性の制限に対しては伸長性を意識したストレッチング を中心に,T字杖歩行獲得に向けては股関節周囲筋中心の筋力訓 練,歩行訓練を中心に介入した.その結果,最終評価(X+34日) では,右膝関節屈曲125°,伸展-10°,足関節背屈0°となった.歩 行はピックアップ型歩行器自立,歩容は右LRからMStでの下腿前 傾が乏しく前足部への荷重が不足していた. 【考察】 本症例は, 右足関節背屈・膝関節伸展の可動域制限によって右LR からMStにかけて下腿前傾が乏しく,骨盤帯が足関節よりも後方 に位置する歩容を呈していた.その問題点に対して上記訓練を実 施し,筋・組織の柔軟性向上と浮腫軽減を認めたが,可動域の改 善は不十分であった. 福本(2016)は足関節背屈時に腓骨の挙上が,福原(2013)は外旋 が必要であると述べており,本症例は一度目の手術において脛骨の 前外側部を切開していることから,腓骨の動きを妨げ背屈制限を呈 していた可能性がある.しかし腓骨に対する詳細な評価はできてお らず可動域制限が残り,T字杖歩行が獲得できなかったと考えた.
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