関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P3-5-5
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一般演題
慢性心不全と変形性股関節症が並存する患者に対する理学療法介入の一例
*川手 優成松尾 洋薄 直宏
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抄録
【はじめに】 近年,2つ以上の慢性疾患が一個人に並存している状態であるマ ルチモビディティが臨床上の課題となっている. 今回,慢性心不全と右変形性股関節症による影響で活動量減少を 伴っていた症例に対し,装具療法による歩容改善後,運動耐容能 改善を目指した症例を報告する. 【症例紹介】 症例は70代女性,身長151.0cm,体重45.0kg,BMI 19.74kg/m, 慢性心不全と診断され入院した.左室駆出率(LVEF)40-45%であ り,重度僧帽弁狭窄症を認めた.僧帽弁置換術後,右変形性股関 節症による跛行がADL拡大の制限因子となっていた.脚長差は左 棘果長75cm,右棘果長72.5cmであった.自宅退院後,外来リハ ビリ導入となり継続介入となった.外来リハビリでは,装具を作成し, 運動耐容能改善にむけて生活指導,運動指導を実施した. 【倫理的配慮,説明と同意】 症例報告についての主旨,匿名性の保持について口頭で説明し, 協力の同意を得た. 【介入内容と結果】 (評価)10m歩行,体成分分析装置での測定,大腿四頭筋筋力 (治療内容)歩行練習による有酸素運動を実施したが,脚長差によ る跛行を生じ下肢の易疲労性を認めた.そのため簡易的な補高を 行いエルゴメーターでの有酸素運動,レジスタンストレーニングを 実施し,1カ月後に再評価を行った. (結果)体成分分析装置による評価では全身筋肉量27.1kgから 29.2kg,右下肢筋肉量3.77kgから4.30kg,骨格筋指数4.3kg/ mから4.9kg/mへとそれぞれ増加した. 【考察】 本症例は慢性心不全と右変形性股関節症の並存により活動量減少 や筋力低下が生じ,運動耐用能が低下していた.僧帽弁置換術後 にADL拡大,運動耐用能向上のための心リハ介入を行う際に,ま ず右変形性股関節症に対し,装具療法と運動療法を実施した.全 身の骨格筋量増加と右下肢骨格筋量の増加の結果からは,脚長差 が解消され,歩行数増加や日常生活動量が増加した可能性が示唆 される. 入院早期より理学療法士が介入し,活動制限の原因とひとつであ る運動器の問題点に対し装具療法や運動療法を行ったことで,心 リハの本来の目的である運動耐容能の改善,生活の質の向上にも 大きく関与したと考えられる. 【結論】 身体機能全般に介入できる理学療法士はマルチモビディティに対 し,有効な介入ができる可能性が示唆された.
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© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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