抄録
【はじめに,目的】
近年,客観的臨床能力試験(以下,OSCE)を導入する養成校が増
えており,本校においても2023年よりOSCEを導入している.本
校のOSCEは法人内の理学療法士(以下,PT)5名に評価者を依頼
し,学生をランダムに5グループ(以下,Gr)に振り分け,各Grに評
価者1名,本校の教員で構成された模擬患者(以下,SP)1名を配
置して実施している.本研究の目的は,現在の実施方法の問題点
を明らかにし,実施方法を再検討することである.
【方法】
対象は2024年度理学療法学科3年生41名のうち,留年者4名を
除いた37名とした.方法は1)Grごとの学生のGPAに差はあるか,2)
GrごとのOSCE得点に差はあるかを調べた.統計処理はExcel統
計ソフトを使用し,1)一元配置分散分析,2)Kruskal-Wallis検定
を行った.
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には研究の目的と研究の参加により個人に不利益が生じな
いことを説明し同意を得た.
【結果】
各GrのGPAの平均値はGr 1(2.85±0.34), Gr 2(2.42±0.47),
Gr 3(2.71±0.28),Gr 4(2.69±0.45),Gr 5(2.66±0.42)で
あり,5群間に有意差は認められなかった.2)について,各Grの
OSCE得点(80点満点)の平均値はGr 1(46.0±7.60),Gr 2(76.0
±3.46),Gr 3(70.1±4.02),Gr 4(69.3±1.60),Gr 5(70.6±
3.69)であり,5群間に有意差を認めた(p<0.001).
【考察】
OSCEは学生の学習意欲を増し,臨床実習への取り組み態度を向
上させる効果が期待されるとされている一方で,評価者の判断が
大きく影響するため,評価者間による得点のバラつきにより,学生
の学習意欲を低下させてしまうことも懸念される.今回,Gr毎で
学生のGPAに有意差を認めないにも関わらず,得点にGr間差を認め
た原因として,学校側のオリエンテーションが充分でないことによ
り共通認識の不足が考えられる。先行研究では,マニュアルは評
価者の一致度を高めるためにも詳細に作成し,評価者が熟読する
ことが必要であるとされているため,本校でもより詳細なマニュア
ルの作成や入念なオリエンテーションの実施により,評価者間一
致度を向上させていく必要があると考える.引き続きOSCEの実
施方法を検討していき,より質の高い教育を学生に提供していき
たいと考える.