林業経済研究
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「分権化」時代における自治体林政の展開 : 熊本県の間伐対策事業の分析
佐藤 宣子岡森 昭則
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2000 年 46 巻 2 号 p. 31-36

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抄録

近年,森林・林業政策は,森林法改正による市町村の役割強化が打ち出されるなど「分権化」時代へむけて大きな転換点にある。財政的にも「森林・山村対策」や「国土保全対策」といった交付税措置がなされ,県及び市町村による森林・林業に係わる単独事業が急速に拡大している。本論文では熊本県が98年度から実施している2つの間伐対策事業を事例にして,(1)事業発足の経緯と内容(2)市町村別の実施状況,(3)事業効果と課題,(4)交付税及び町村財政の動向について分析した。間伐実施に大きな効果を発揮しているものの,自治体間の取組に大きな差がある。また,森林組合の事業展開や林家の自伐拡大などが見られる一方で,皆伐の回避を目的とした高齢級間伐対策は大面積皆伐が問題になっている町村では十分に取り組まれていないこと,県段階で森林組合に担い手を絞ったため地域に適合しない場合もあること,交付税総額としては減額している自治体もあり,財政的に厳しい市町村では事業に取り組めないなどの問題が明らかになった。

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© 2000 林業経済学会
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