関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P4-1-6
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一般演題
感覚脱失患者に対する足底感覚入力が歩行時荷重量に及ぼす即時効果  
-ABABシングルケースデザインによる検討-
*戸崎 精宮島 恵樹
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キーワード: 感覚障害, 足底感覚, 荷重
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抄録
【はじめに,目的】 体性感覚障害に対するリハビリテーションでは,障害部位に様々 な物品を用いて感覚入力を行い,識別させる課題が推奨されてい る.一方,これらは刺激量を増幅させ,残存している感覚の感度 や精度の改善を図る目的であることから,感覚が完全に途絶した 感覚脱失患者に対しても有効であるかは不明である.従って本研 究の目的は感覚脱失症例に対する足底刺激が歩行時最大荷重量 に及ぼす即時効果について,シングルケースデザインを用いて明ら かにすることである. 【方法】 症例は当院回復期リハビリテーション病棟に入院した右視床出血 により左片麻痺を呈した50歳代女性である.ベースライン測定時 は発症後54日,麻痺側Brunnstrom Recovery Stageは上肢Ⅴ, 手指Ⅴ,下肢Ⅵであった.左上肢,下肢の全部位において表在感 覚検査は10点法にて0点であった.理学療法時のみ歩行練習を行っ ており,片手で平行棒を把持することで介助なく歩行可能であっ た.本症例に対する足底刺激の即時効果を検討するため,介入は ABAB型シングルケースデザインとし,通常の運動療法に加えA期 は裸足での立位,歩行練習を行い,B期は市販の凹凸のあるイン ソールを用いて足底刺激下での立位,歩行練習を行った.各期終 了時に普段靴を履いた状態での平行棒内歩行における歩行時最大 荷重量を測定,体重比を算出した.なお荷重量の測定には荷重測 定器GET'Aを使用した. 【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は院内倫理審査委員会の承認を得て実施した.また症例に 対して口頭にて説明を行い,研究参加の同意を得た. 【結果】 歩行時最大荷重量はベースライン時 8 6.9%BW,A1 86.4%BW, B1 89.4%BW,A2 85.8%BW, B2 88.9%BWであり,A期終了 時と比較してB期終了時に高い値を示した. 【考察】 本研究において足底刺激下での歩行練習後により,即時的に歩行 時荷重量が増加することが明らかになった.足底からの荷重感覚 情報は脊髄を介して下肢の伸筋群を促通し,荷重支持に貢献する ことが報告されているおり,本症例においても足底刺激により歩 行時最大荷重量が増加したと考えられる.従って本研究より足底 への感覚入力は知覚が困難な感覚脱失症例においても脊髄が残 存していれば即時的な下肢支持性改善に有用であることが示唆さ れた.
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© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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