抄録
【はじめに,目的】
厚生労働省が2022年に公表した業務上疾病発生状況等調査(休
業4日以上)では,腰痛は保健衛生業において病原体による疾病
(COVID-19)に次いで第2位と多い.2023年1月に慈泉会(以下,
当会)の職員に向けてオンラインによるアンケートを実施した結果,
回答者の4割以上の職員が腰痛を患っており,5割以上が腰痛予防・
改善に向けた講習会の開催を希望していた. 職員が健康的に日々
の仕事を遂行できるようになることを目的に,理学療法士が取り
組める対応策を実践した.
【実践内容,方法】
対象は2023年5月時点で当会に在籍する職員2041人とした.実
践内容は当会共有のファイルサーバーを用いて,「腰部に負担の少
ない座位姿勢」を学ぶ教育動画を配信した.そして,動画の視聴
後にオンラインでのアンケートを実施し,理解度を把握した.質
問項目は,①腰部に負担の少ない座位姿勢の理解ができたか否
か,②理解できなかった場合の理由,③教育動画の配信を今後も
希望するか否か,④配信して欲しい動画内容,⑤教育動画の配信
だけでなく対面での腰痛予防・改善の講習会を行った際の参加希
望の有無とした.②と④についてはフリーコメントで入力してもら
い,④はユーザーローカル テキストマイニングツールによる分析を
行い,スコア順のワードクラウドを作成した.
【倫理的配慮,説明と同意】
アンケートは事前に紙面による研究利用・公表の説明を行い,同
意が得られた場合のみ回答を得た
【結果】
アンケートは1509/2041人(73.9%)の職員から回答を得た.
1226/1509人(81.2%)が腰部の負担の少ない座位姿勢を概ね理
解できたと回答した.教育動画の配信を今後も希望している職員
は459人(30. 4%)存在し,「インナーマッスル」が重要度の高い単
語としてテキストマイニングされた.教育動画の配信だけでなく,
対面での腰痛予防・改善の講習会を希望している職員は433人
(28.7%)存在した.
【考察】
教育動画は多くの職員に腰痛に対する指導が出来る有用な方法で
あった.腰痛は身体的要因だけでなく,さまざまな要因が複雑に
組み合わさっているため,教育動画の配信以外にも個別的な教育
が必要と考えられた.
今後は個別的な腰痛指導へのニーズに応えるため,対面による講
習会を行っていきたい.