関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P4-2-6
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一般演題
骨盤底筋群トレーニングと腰椎安定化運動により尿失禁が改善した腰椎椎体間固定術後に腰痛を有した一症例
*中畑 海松崎 祐太郎坂井 怜古谷 英孝星野 雅洋
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抄録
【はじめに,目的】 骨盤底筋群と腹横筋は,体幹の動的安定性に関与しており,骨盤 底筋群トレーニンング(PMFT)と腰椎安定化運動の併用は,慢性 腰痛を有する女性の尿失禁に有効である.今回,腰椎固定術後に 腰痛と尿失禁を呈した患者に対する,PMFTと腰椎安定化運動の 併用効果について検討した. 【症例紹介,評価,リーズニング】 本症例は,腰部脊柱管狭窄症に対し,側方侵入椎体間固定術(L1- 3)と経皮的椎弓根スクリュー(L1-3)を施行された70歳代女性で ある.介入前評価において,腰痛VASは60mm,自覚的な尿失 禁症状の質問票(ICIQ-SF)は10点,尿失禁の特異的QOL質問票 (KHQ)は44点,過活動膀胱症状質問票(OABSS)は8点,膀胱 底挙上率は4.2%,腹横筋収縮率は33%であった(膀胱底挙上率と 腹横筋収縮率は超音波画像診断装置にて測定).評価より,手術 侵襲に伴う腹横筋と,腹横筋と共同収縮をしている骨盤底筋群に 機能不全が生じ,腰痛と尿失禁を呈したと考えた.そこでPMFT に加え,腹横筋の機能不全に有効である腰椎安定化運動の併用介 入を実施した. 【倫理的配慮,説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき事前に説明を行い,同意を得た上で実施 した. 【介入内容と結果】 介入デザインはAB法を用いた.A期は通常介入とPMFTを実施し, B期はA期内容に加え腰椎安定化運動を実施した.PMFTは坐骨結 節内側で骨盤底筋群の収縮を確認し,10秒収縮と1秒収縮を各10 回10セット実施した.腰椎安定化運動は膝立て臥位にて圧バイオ フィードバック装置を腰部へ設置し,圧力を40mmHgに維持しな がら股関節外旋運動を10回10セット実施した.介入期間は各時期2 週間,評価時期は介入前(A’ ),A期終了時(A),B期終了時(B)とした. 効果判定には腰痛VASは臨床最小重要変化量(MCID:21mm), ICIQ-SFはカットオフ値(6点)を用い,KHQ,膀胱底挙上率,腹横 筋収縮率は前後比較を用いた.結果を示す(A’→A→B).腰痛VAS [mm](60→35→10)はA期,B期でMCIDを上回った.ICIQ-SF [点] (10→4→4)はA期でカットオフ値を上回った.膀胱底挙上率 [%] (4.2→21→24),KHQ [点](44→42→32)はB期で大幅な改善を 認め,OABSS [点](8→6→4)は各時期で改善を認めた.腹横筋 収縮率 [%](侵襲側33→11→67)はB期で改善を認めた. 【考察】 腰椎固定術後に腰痛を有した患者に対するPMFTと腰椎安定化運 動の併用は,骨盤底筋群と腹横筋の共同収縮が促され,尿失禁 の特異的QOLの改善に有効である可能性が示された.
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© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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