抄録
【はじめに,目的】
文部科学省によると,「学生生活不適応・学習意欲低下」,「就職・
起業等」といった理由で中途退学する学生が全体の約半数を占め
ているとしている.また,金子らによると「就職・起業等」のように
別の目標を持ち進路変更する学生もいる一方,消極的な理由で大
学を辞める学生もいるとしている.しかし,進路変更を考える程
度とその要因の程度との関連を報告しているものは極めて少ない.
本研究の目的は進路変更を考える要因を明らかにし,今後,消極
的な理由で進路変更をする学生を減少させるための一助とした.
【方法/症例紹介,評価,リーズニング/実践内容,方法】
A大学理学療法学科,1 ~ 4年生の255名にアンケート調査を実
施した.調査内容は「進路変更を考えているか」は有無の2択での
回答とし,「進路変更をしたい程度」及び要因として考えられた8項
目(進路決定,興味のある分野,学習への苦痛,学習量,学習難
易度,学業成績,理想の職業,理学療法士像)を5段階評価(1=
否定~ 5=肯定)とした.統計処理は進路変更の考慮程度と関係
のある8項目との間でSpearmannの順位相関分析にて検討した.
また従属変数を進路変更の程度,独立変数を要因と思われる8項
目とした重回帰分析(ステップワイズ法)により因果関係についても
検討した.統計ソフトは,SPSS23を使用し,有意確率5%未満
とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
アンケートの実施にあたり,参加は任意とした.本研究は特定の
企業との利益相反はない.
【結果/介入内容と結果】
進路を変更したいと思う程度と進路は自分で決めた(p=-0.12),
興味のある理学療法分野がある(p=0,46),目指している理学療
法士像(p=-0.28),思い描いていた職業(p=-0.49)との関係は有
意な負の,日々の学習に苦痛を感じる(p=0.90)という質問項目は
有意な正の相関を示した.また,重回帰分析では目指している理
悪療法士像(β=-0.28),思い描いていた職業(β=-0.49)という
項目で標準偏回帰係数に有意差がみられた.
【考察】
進路変更の要因は,学業成績そのものよりも理学療法士の業務に
対する認識や憧れに左右されることが示唆された.要因と考えら
れた8項目について否定的な回答ほど進路変更を考える程度が高
いということが分かった.また,「目指している理学療法士像があ
る」,「思い描いていた職業だった」という項目との関係が強く示唆
された.