関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P4-6-2
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一般演題
座位保持能力改善を認めた左アテローム性血栓性脳梗塞の一症例
~姿勢制御に着目して~
*髙橋 脩大朗
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抄録
【はじめに,目的】 Mihara(2014)は姿勢制御と皮質-網様体脊髄路が大きく関与して おり,身体に対して加わる外乱の予測が行われている際に,外乱 後の姿勢を安定させるため,それに先行する筋活動が生じるとして いる.これを,予測的姿勢制御と呼び,前運動野・補足運動野に 関与していると述べている.今回,予測的姿勢制御に着目して体 幹機能へのアプローチにより,座位保持能力の改善に至ったため, 以下に報告する. 【症例紹介,評価,リーズニング】 70代女性,X日に言葉が出ないことに息子が気付き救急要請. MRIにて左前頭葉梗塞と診断され,X+31日に当院回復期病棟に 転院. 初期評価(X+40日)右Brunnstrom Recovery stage( 以下 BRS)Ⅰ-Ⅰ-Ⅱ,SIAS 23点(垂直機能1点,腹筋0点),Trunk Control Test (以下TCT)37点.体幹筋の低緊張が著明であり, 座位は立ち直り反応が見られず,右後方への姿勢崩れを認め重介 助.また,左上肢でベッド柵を把持すれば,短時間の座位保持は 可能であった. 本症例は一次運動野から内包にかけての脳梗塞によって,右上下 肢に運動麻痺が生じていた.そして,前運動野・補足運動野も障 害されており,座位姿勢制御困難となっていると考えた.また, 体幹筋群と股関節周囲筋の低緊張により座位保持が困難であり, 座位バランスの低下が著明であった. 【倫理的配慮,説明と同意】 ヘルシンキ宣言に則り,口頭・書面にて説明を行い同意を得た. 【介入内容と結果】 姿勢制御機能の賦活:下肢・体幹筋群の神経筋促通.寝返り動作. 鏡を用いて視覚的フィードバックを利用した端坐位訓練,立位訓 練や長下肢装具での歩行訓練を実施. 本症例は,重度の運動性失語も生じており,治療の工夫として YES / NOといったクローズドクエスチョンにて意思疎通を図りな がら上記治療を実施した. 結果(X+82日)右BRSⅠ-Ⅱ-Ⅳ,SIAS 33点(垂直機能2点,腹 筋1点),TCT 62点. 体幹筋の低緊張改善により,座位姿勢は, 左右への立ち直り反応が出現し,右後方への姿勢崩れが改善.ま た,ベッド柵を把持せず長時間見守りで座位保持可能となった. 【考察】 先行研究より,予測的姿勢制御に着目し,体幹機能へアプローチ した結果,下肢・体幹筋の低緊張が改善したことにより,座位姿 勢制御の改善に繋がったと考える.また,立位や移乗動作の介助 量軽減も認めた.
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© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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