関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P5-1-2
会議情報

一般演題
自主練習をベースにしたミラーセラピーにより幻肢痛が改善した一症例
*鈴木 啓介清宮 大翔
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】 幻肢痛の発症は脳における感覚運動野の不適応が関与しており, 切断者において強い幻肢痛は睡眠などを妨げ,義士装具装着練習 が困難となる.今回,右膝壊死性筋膜炎による右下肢切断にて幻 肢痛が持続した症例を経験した.本症例に対し自主練習をベース にしたミラーセラピー(MT)を提供し,幻肢痛の軽減と義足歩行の 獲得に至ったため報告する. 【症例紹介】 40歳台男性,X-34日に右膝部腫脹・疼痛出現.壊死性筋膜炎に てX-25日に切開排膿施行.X-18日に深部まで炎症が波及してい るため右大腿切断に至る.切断後より幻肢痛が出現.X日に当院 へ転院し同日よりリハビリ開始となる. 【評価】 幻肢痛は入院時及び1か月ごとの平均の痛みの強度をnumerical rating scale(NRS)にて評価した.入院時はNRS 7であり,しび れ・むずむずする・血管内をさされるなどの内省があり睡眠障害も 認めた.幻肢痛の頻度は毎日で煩わしさあり.幻肢の運動は困難. 断端長は26.1cm,断端部の股関節内転20度,伸展15度,MMT は3 ~ 4レベル,感覚は断端部軽度しびれあり,歩行能力は平行 棒内軽介助で病棟内の移動は車いすを使用.FIM:93点(運動62 点・認知31点). 【倫理的配慮,説明と同意】 本症例には報告の趣旨や個人情報の保護等に関して説明し同意を 得た. 【介入内容】 右大腿切断に対し理学療法開始.並行して自主練習ベースでの MTを指導した.MT時の姿勢は端坐位,切断部位を鏡の後ろに 隠し,鏡に映った非切断肢の反対像を確認し,ゆっくりと動かす. また動きに変化を加え,切断肢を運動している錯覚を惹起するよ う設定した.自室にて1日1回,10 ~ 25分間行い,日記(NRS・ 実施時間・練習内容)を記入するよう説明した. 【結果】 介入1か月後,さされるような痛みは残存したが,強度はNRS 3と 軽減し,睡眠中の発現は無くなった.頻度は毎日と変わらなかっ たが,幻肢痛の煩わしさは無いとの内省あり.X+43日より義足 歩行練習を開始し,幻肢痛に変化がないためMT終了とした.義 足歩行練習において幻肢痛による阻害はなく,約2か月にてロフス トランド杖を使用した屋外歩行・階段昇降を獲得し,FIM:119点(運 動84点 認知35点)と向上が見られ自宅退院となる. 【考察】 一般的な義足歩行練習期間は2 ~ 4か月とされ,幻肢痛によりそ の期間は延長する.自主練習ベースでのMTは幻肢痛の軽減に伴 い義士装具適応期間を最適化し,義足歩行の獲得・ADL向上に 寄与すると示唆される.
著者関連情報
© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top