抄録
【はじめに,目的】
本研究の目的は,変形性膝関節症(Knee osteoarthritis:以
下,KOA)患者の膝伸展筋力と内側広筋(vastus medialis:以下,
VM)の筋輝度との関連性を調査し,理学療法介入の一助とするこ
とである.
【方法】
対象は2024年1月から2024年5月までに当院を受診し,KOAと
診断された患者46例92膝とした.調査項目は,基本情報として
性別,年齢,BMI,Kellgren-Lawrence分類(KL分類),客観
的評価としてVMの筋輝度,等尺性膝伸展筋力,患者立脚型評価
として膝関節痛(visual analog scale:以下,VAS)とした.VM
の筋輝度評価は,SONIMAGE MX1(コニカミノルタ社製)を使
用し,リニア式電子スキャンプローブ(L14-4),Bモードで撮像し,
超音波画像診断装置に搭載されているHistogram 計測機能を用
いた.VMの測定方法は,先行研究に準じ,大転子と大腿骨外側結
節の間の30%遠位から内側に移動させたVM筋腹部にプローブを
当て計測した.等尺性膝伸展筋力評価は,ハンドヘルドダイナモ
メーター(酒井医療株式会社製,モービィ100)を用いた.統計解
析は,等尺性膝伸展筋力とVMの筋輝度との関連性を調査するた
め,性別,年齢,BMI,KL分類,VASを共変量として調整した
spearmanの順位相関係数に基づく順位偏相関を実施した.統計
ソフトは,Rコマンダー 4.3.3を使用し,有意水準5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,当院倫理委員会の承認(承認
番号:2024034)を得て実施した.
【結果】
対象の平均年齢67(39 ~ 84)歳,平均BMI 23.6(3.0)kg/㎡,
KL 1:40例,KL 2:34例,KL 3:15例,KL 4:3例であった.
spearmanの順位相関係数に基づく順位偏相関の結果,VMの筋
輝度(r=-0.38,p=0.01)に有意な関連性を認めた.
【考察】
KOAにおいてX画像所見の進行度に関わらず,VMの筋輝度が高
い患者ほど膝伸展筋力が弱い傾向があることが明らかとなった.
VMの筋輝度の高い状態は脂肪浸潤や結合組織の増加などを示し
ている.筋の質に着目した理学療法の展開が必要である可能性が
示唆された.
【結論】
膝伸展筋力とVMの筋輝度には相関があることが明らかとなった.