関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P8-5-4
会議情報

一般演題
Proprioceptive Neuromuscular Facilitation (PNF)を実施し,歩容改善を目指した脳梗塞後の片麻痺症例
*髙村 祐生増田 健太佐藤 俊彦
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】 PNFは脳卒中理学療法ガイドラインで一般運動療法の実施,ま たはその併用も含め適切に選択し適用することが推奨されている. 今回,脳梗塞後の片麻痺を呈した症例に対し歩容改善を目的に PNFを実施し,即時的ではあるが効果を認めた為,報告する. 【症例紹介】 脳梗塞(左内包~放線冠)で入院した,30代男性.Brunnstrom Stage右Ⅴ-Ⅴ-Ⅳ,徒手筋力検査(MMT)右三角筋・前鋸筋・僧帽 筋中・下部線維は4,右腸腰筋・中殿筋・大腿四頭筋・前脛骨筋 は3,表在・深部感覚は軽度鈍麻,片脚立位は左10秒,右は困難. 歩行は右荷重応答期(LR)~立脚中期(MSt)で膝関節外反位及び 体幹右側屈位,右遊脚相の努力的な振り出し,クリアランス低下, 全歩行周期で右優位の肩甲帯屈曲・前傾を観察した.16病日目の 肩甲帯の評価では,右肩関節最終屈曲位にて肩関節前面に圧迫 感があったが,右肩甲帯を後傾方向へ誘導する事で軽減した.右 肩甲帯下制・内転のMMT時に,左股関節伸展・外転を観察した. 【倫理的配慮 説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき,個人情報保護に配慮し,本人へ説明を 行い,同意を得た. 【介入内容と結果】 15,16病日目の2日間介入.15病日目は右股関節周囲の筋出力向 上を目的に介入.介入後,右LR ~ MStの膝関節外反位は改善し たが,右肩甲帯屈曲・前傾,体幹右側屈は残存した.さらに体幹 の左右動揺,右クリアランス低下が著明となった. 16病日目は前日の介入に加え,右僧帽筋中・下部線維の筋出力 向上を目的に介入.介入後,右肩関節最終屈曲位での圧迫感は 軽減,MMT時の左股関節伸展・外転は消失した.歩行では右LR ~ MStで体幹右側屈軽減,右遊脚相の円滑性・クリアランス向上, 全歩行周期で右肩甲帯屈曲・前傾の軽減を観察した. 【考察】 歩行の振り子モデルは,位置エネルギーと運動エネルギーの変換 作用により,効率化を図っている.本症例では右肩甲帯屈曲・前 傾の改善が,右LR ~ MStでの体幹右側屈の軽減に繋がり,位置 エネルギーが増大した事で遊脚相の円滑性・クリアランスが向上し たと考える.一方,15病日目の右股関節周囲筋への介入では右LR ~ MStでの体幹右側屈が残存し,重心の過度な右側方偏位が生 じ,歩容の悪化へと繋がったと考える.PNFを基に運動療法を実 施し,動作の変化を認めたが,下肢アライメントの変化のみに焦 点をあてるのではなく,全身のアライメントを捉え,歩容改善に必 要な機能に対して介入することが重要であった.
著者関連情報
© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top