関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P9-7-5
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一般演題
靴底踵外側部の摩耗が股関節モーメントインパルスに与える影響
*瀬黒 淳矢石井 慎一郎山本 澄子
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抄録
【目的】 靴には,関節の安定性を保ち外力による衝撃を緩衝する機能を有 している.しかし靴の機能は靴底のすり減りと共に低下する.一 般的に,歩行は踵外側から接地するため靴底の踵外側部に局所的 な摩耗が起こり,靴底に傾斜を生じさせる.摩耗した靴を履き続 ける事で,歩行時の身体制御に影響し,前額面上での股関節モー メントに影響を与える可能性がある.近年の前向き研究によれば, 股関節累積負荷(立脚期の股関節内・外転モーメントインパルスと 1日の歩数の積)が変形性股関節症のリスクファクターであると報告 されている.しかし,靴底の摩耗が股関節内・外転モーメントイン パルスに与える影響については明らかになっていない.そこで本研 究は, 靴底の摩耗が股関節内・外転モーメントインパルスに与える 影響について明らかにすることを目的とした. 【方法】 対象は,健常成人15名30脚とし,計測機器は8台の赤外線カメラ から構成された三次元動作解析装置と,6枚の床反力計を使用し た.実験靴は,先行研究を元に作成し,靴底踵外側部が摩耗した 摩耗条件,靴底が平坦の通常条件の2条件を用意した.計測課題 は摩耗条件・通常条件それぞれの靴を着用した自由速度での歩行 とした. 歩行計測によって得られたデータから股関節内・外転モーメント インパルスを計算し,対応のあるt検定にて2条件の差を比較した. 統計解析はEZR Verl.40を使用した. 【倫理的配慮】 本研究は,所属施設の倫理委員会の承認を得たから実施した. 【結果】 摩耗条件が通常条件と比較し,股関節内・外転モーメントインパ ルスが有意に増加していた(p<0.01).また,初期接地(以下IC) 直後の股関節内転モーメントインパルスが摩耗条件で有意に増加 していた(p<0.01). 【考察】 本研究の結果より,靴底の摩耗は股関節内・外転モーメントイン パルスを増加させることが示唆された.これは,靴底摩耗による 足底面に生じた傾斜によりIC直後に下腿が外側方向へと力が働 く.この下腿の外側傾斜に対してIC直後の股関節内転モーメント インパルスを高めることで代償し,前額面上での安定性を確保した と推察する.以上のことより,股関節内転モーメントインパルスが 増大し,立脚期中の股関節内・外転モーメントインパルスが増大し たと考えられる.よって,靴底の摩耗は股関節内・外転モーメント インパルスを増加させ,股関節累積負荷を増加させる可能性が示 唆された.
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