関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P1-1-5
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一般演題
鎖骨骨幹部骨折術後,重量物の運搬を繰り返し行い鎖骨上神経領域に疼痛が生じた症例
*佐々木 雄大
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抄録
【はじめに】 今回,鎖骨骨幹部骨折術後に重量物を繰り返し運搬したことで鎖 骨上神経領域に触刺激での疼痛が生じた症例に対し,疼痛の軽減 を目標に行なった介入について報告する. 【症例紹介,評価】 60代男性,診断名は右鎖骨骨幹部骨折でプレート固定を施行. 仕事は建築物の清掃,運搬等の作業.術後6 ヶ月で右肩関節可動 域屈曲150°,外転120°,MMT5,術創部周囲皮膚の伸張性低下, 表在感覚軽度低下を認めていた.その後,一時的に仕事復帰し約 30kgの錘がついたカラーコーンを60回程度運搬した後,鎖骨か ら2横指上部から第2肋骨レベルの範囲に触刺激でVAS86mmの 疼痛が生じた.レントゲン画像には異常は確認できなかった.右 胸鎖乳突筋,僧帽筋上部線維の硬さ,圧痛を認めた.肩甲上腕 関節,肩甲胸郭関節の自動・他動運動では触刺激による疼痛と同 部位に疼痛が生じたが胸鎖関節,肩鎖関節への圧痛は生じなかっ た.頸部の右側屈,術創部を含む鎖骨周囲皮膚の長軸方向への 弛緩操作で触刺激でVAS 34mmと疼痛軽減がみられた. 【倫理的配慮,説明と同意】 本症例はへルシンキ宣言に基づく倫理配慮のもと,対象者に介入 方法について説明し同意を得た. 【介入内容と結果】 僧帽筋上部線維・胸鎖乳突筋リラクゼーション,術創部周囲皮膚 モビライゼーションを実施.その結果,触刺激での疼痛はVAS 15mmに軽減し疼痛が生じた範囲は鎖骨上縁から鎖骨二横指下ま で縮小した. 【考察】 疼痛の原因は肩甲上腕関節,肩甲胸郭関節の自動・他動運動で疼 痛が生じたが,関節周囲に疼痛が限局していないため関節障害は 除外した.また触刺激程度で疼痛を知覚しているため筋障害も除 外した.頸部の右側屈,術創部を含む鎖骨周囲皮膚の長軸方向へ の弛緩操作で触刺激による疼痛が軽減したため皮神経の障害が原 因と推測され疼痛が生じている部位から鎖骨上神経が障害されて いると考える.鎖骨上神経は僧帽筋上部線維・胸鎖乳突筋を包む 頸筋膜浅葉を貫通し鎖骨上を走行している.そのため術創部の瘢 痕化と繰り返しの重量物運搬により僧帽筋上部線維,胸鎖乳突筋 が過収縮し頸筋膜浅葉の過緊張が生じたことで鎖骨上神経が絞扼 されたと考察する.今回,頸筋膜浅葉と術創部の滑走性の向上に より疼痛の減弱と疼痛範囲の縮小が得られたと考える.
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