主催: 日本理学療法士協会 関東甲信越ブロック協議会, 一般社団法人 山梨県理学療法士会
会議名: 第44回関東甲信越ブロック理学療法士学会・第28回山梨県理学療法士会学術集会 合同学会
開催地: 山梨県
開催日: 2025/11/15 - 2025/11/16
【はじめに、目的】
理学療法の臨床において対象者の動機づけの状態は、運動療法の効果を左右する重要な要因である。先行研究では、成功基準の厳しさが対象者の動機づけや運動学習に影響を与えることが明らかにされているが、失敗基準の効果はこれまでに解明されていない。本研究では、課題遂行成績に対する判断基準(成功・失敗)が対象者の内発的動機づけと運動学習に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
健常若年者 34 名が目標点に向かってお手玉を投げる運動課題を実施した。お手玉の投げ方は非利き手での下投げとし、対象者から着地点が見えないように、対象者と目標点の間にパーティションを設置した。目標点と着地点の乖離距離に応じて得点を与えた(最大 10 点)。対象者は得点が 7 点以上で「成功」と伝えられる成功基準群と、6 点未満で「失敗」と伝えられる失敗基準群のいずれかに無作為に振り分けられた。実験はプレテスト、練習試行、練習終了 24 時間後の保持テスト、重量の異なるお手玉を使用する転移テストで構成した。練習試行でのみ毎試行後に課題得点と成功あるいは失敗についての情報を与えた。練習試行終了直後に内発的動機づけ尺度と課題遂行によって生じる精神的負担感(NASA-TLX)を測定した。統計解析では、課題遂行成績、内発的動機づけ尺度得点、 NASA-TLX 得点に対する群間比較を実施するとともに、保持・転移テストにおける課題得点と内発的動機づけ尺度および NA- SA-TLX の偏相関分析を実施した。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者には事前に本研究の内容について口頭および書面で説明し、同意を得た。
【結果】
両群においてプレテストと保持・転移テストの間で課題得点の有意な上昇を認めたが(ps<0.001)、有意な群間差は認められなかった。内発的動機づけ尺度の得点に有意な群間差は認められなかった。 NASA-TLX では、成功基準群の精神的負担(p =0.018)および身体的負担(p=0.029)は失敗基準群よりも有意に高値であった。偏相関分析の結果、基準の性質によって保持・転移テストの課題得点と関連する要因が異なることが示された。
【考察】
本研究の結果、判断基準の性質は対象者の内発動機づけや運動学習に直接的な影響は与えないものの、精神的負担感に異なる影響を与えることが明らかとなった。また、対象者の特性によって効果的な判断基準が異なることが示唆された。