本論文は,法学的な概念規定から,実定法における独立行政法人の制度化をまず明らかにし,次に行政改革戦略としての独立行政法人の評価を試みる。公務員制度,会計基準の特徴からの考察を行い,現在議論を呼んでいる国立大学の事例をとりあげる。
もともと「独立行政法人」の用語は,行政法学上の概念である。英国のエージェンシーをモデルにしたものの,伝統的法学概念により制度設計された。行政の効率化をめざしたものの,職員の身分間題が議論を呼び,公務員の身分を有する法人が圧倒的多数ながら,公務員定員削減の対象外とする奇妙な結論となっている。かつ,会計基準をみても,公法人としての性格を強く打ちだし,「独立」の契機が弱いことが推察できる。国立大学も独立法人化が議論されている。最終的には,本来の独立行政法人とは別個の体系となるようである。最大の要員を抱える国立大学が特別扱いとなるのであれば,そもそも独立行政法人設立のもともとのねらいが達成できるか,疑問である。
独立行政法人の制度設計は,マネジメント改革から組織改革と身分問題に関心が移り,「第2の特殊法人」となりかねない矛盾を抱えることになった。