本稿は,2009年の総選挙で多数の議席を獲得し政権交代を果たした民主党政権(国民新党,社民党との連立ではあるが)が直面している問題点を整理したものである。
権力の移行という意味での政権交代の事例が少ない日本で,今回の政権交代を分析するために,(1)過去における政治改革の文脈で位置づける。(2)民主党政権は政策決定過程を変え,さらに,その変えたシステムを使って政策内容を変えるという方針が,現実の政治のなかで,なぜ簡単ではなかったのかを明らかにする。(3)マニフェスト政治を本格的に展開しようとすると,財源をはじめとする現実的な問題に直面する。マニフェストの作り方や実行体制,司令塔の重要性,具体的に推進するための工程表の作り方などの問題に触れる。この政治過程とは,有権者の政権選択を原点にして,国会→内閣→各府省大臣→各府省のもとで「首相を中心とする内閣のリーダーシップ」を確立するというシステムとしての「権力」の軸と,政策課題をマニフェストに集約して,総選挙で国民との対話を図り,「総選挙」→「実行体制」→「政策実施」→「実績評価」→「総選挙」のサイクルの「政策」の軸とからなる。この「権力」と「政策」が交錯する地点で,政党と政府のダイナミックな関係が発生する。その政策の軸には,政権交代時に起きる「ポリシーレビュー」(policy review)と政策転換を含む。政権交代が特別なことではなく日常的になるということは,政権交代や政策転換が公共政策の研究にどれだけィンパクトを与えるかを論ずることも重要になってくる。